雨色
□帰還
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とある病室の一室。
白に囲まれたベッドで死んだように眠る一人の少女。
そして、その脇には三人の男女。
女が無言で懐から薄紫の蝶を取り出すと
「…始末されるかもしれないぞ?」
黒髪の男の問いに銀髪の男は苦い顔をし、女は哀しそうに微笑む。
この数分後、三人の姿は無くなっていた。
「これより緊急隊首会を始める」
威厳ある声が響く一番隊の隊首室には、護廷十三隊の各々の隊長が集まっていた。
「本日集まってもろうたのは、おぬし等に紹介したい者がおるからじゃ」
これまでとは違う展開に場に流れる空気が変わる。
そんなものは気にもせず続けて話すのは総隊長こと、一番隊隊長の山本元柳斎重國。
「まずその者の事を話す前に話さねばならぬ事がある。零番隊の話を」
隊長達はその言葉に眉をしかめたりと反応を見せた。
「山じい…零番隊って…」
女物の着物を羽織った八番隊隊長、京楽春水が驚愕染みた声でそう言えば
「この零番隊が存在しとったのは儂がまだ童だった頃の話じゃ」
“どんだけ昔の事だよ…”そう心中で突っ込んだ者は少なくは無い。
「しかし、おぬし等も聞いた事位はあるじゃろう。昔とある隊長が自分の命と引き換えにこの尸魂界を守った話を」
それは確かに聞いた事のある話。
話と言うより、いつから語り伝えられてきたのかすら分からない様な、嘘か真かも判断しにくい言い伝えだ。
「零番隊は少数の精鋭部隊じゃったが、当時のどの隊よりどの者よりも強い、最強と謳われる隊じゃった。
活動内容は今で言う王属特務…と言ったところかの」
声こそ出ていないが、話を聞いている隊長達数人の驚きを元柳斎は見逃さない。
「その隊長が一人で敵の陣地へ乗り込み滅却したまでは良かったが…いくら待っても帰っては来る事は無かった。
じゃから命を落としたとされ皆は悲しみ、その者達でこそ成り立っていた零番隊は消滅した」
「今元柳斎殿がこの話をされるという事は、紹介者とはその零番隊の…」
こう尋ねるのは鉄笠をかぶった巨漢な七番隊隊長、狛村左陣。
「さよう。先程四十六室から零番隊隊長の帰還の報が届いた」