ギフト

□雨月様より(剣薫小説)
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あなたがそばにいるから






「あら、珍しい」


 薫は、帰宅早々、滅多に見られない光景を目にした。

 それは、縁側で、柱にもたれ掛かり、子供のような無邪気な顔で昼寝をする剣心の姿だった。


「本当に珍しいわね、剣心が昼寝だなんて」


 考えてみると、剣心が昼寝をしているところを目撃したのは、片手で数えるほどしかない。
 結婚する前は、絶対に誰かの前で眠る姿を晒すことはなかった。元来眠りが浅いほうだとは言っていたが、あの頃は誰も剣心が寝入ったところを見たことがなかったのである。
 それが、今ではこんなにあどけない表情を見せてくれることに、薫は喜びを隠せない。


 よく見ると、掃除も洗濯も一とおり終わっている。
 結婚してから、家事はほとんど剣心に任せきりだ(いや、それは婚前もそうだったが)。道場に門下生が増えてからというもの、薫は多忙極まりなかった。
 そんな妻を理解し、支えてくれる剣心。そんな彼に対して、愛しさと感謝の念が込み上げてくる。


 薫は、手を伸ばし、剣心の髪を指で梳くと、彼の耳元に唇を寄せ、こう囁いた。



「お疲れ様。いつもありがとう、あなた……」



 あなた。生まれて初めて、口にした言葉に、薫は急に恥ずかしくなった。

 だが、それが更に増す出来事が起こった。

 目の前の剣心の顔が、みるみる赤くなっていくではないか。


「なっ……! 剣心!」
「……はい」
「た、た、狸寝入り、してたのね!?」
「……いや、本当に寝ていたのだが、つい先ほど目が覚めて」
「言い訳しないでよ!」


 聞かれていないと思って囁いた言葉を、ちゃっかり聞かれてしまった薫は、怒りよりも恥ずかしさでいっぱいだった。
 剣心は剣心で、初めて「あなた」と言われたことに照れているのか、顔を赤らめたままである。



 しばらくして弥彦が道場に顔を出すと、顔を真っ赤にした剣心と薫が、縁側で隣り合って座っていたとか。














「しかし、嬉しかったな」
「!?」
「もう一度、言ってくれぬか?」
「〜〜言わないっ!」










【おわり】








ああああ!嬉しすぎます!
やっぱ夫婦っていいですよね(うっとり)
ありがとうございます!!

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