天翅の翅
□風邪の治し方
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部屋に続く長い廊下。
いつもと何ら変わりのない風景が、今は歪んで見える。
「……なんだろ…?」
少し荒くなった息を整えるため、壁に手をついて胸を抑えた。
「……っ…」
「?おい、ボケ姫」
重い頭を動かして声のした方を向く。
そこには眉を寄せて、怪訝そうに見つめるアポロが立っていた。
「…アポロ…」
「何やってんだよ、こんなトコで」
壁に背中を預け、一呼吸ついてからカラカラに乾いた口を動かす。
「…なんかフラフラするから部屋戻ろうと思って…」
「ふーん…、お前の事だから食い過ぎたんだろ?」
「!!失礼ねっ!アンタと一緒にしないでよ!…っ……!」
大声を出してしまったせいか、頭がガンガンと響いた。
「……ぅ……」
「……シルヴィア?お前顔真っ赤だぞ?」
近くまで来たアポロを視界に捉えた瞬間、フッと足の力が抜け、前に倒れそうになった。
「!!」
地面に倒れたはずが、その痛みはなく、その代わりに私の背中には暖かい感触があった。
「おい!急にどうしたんだよ!シルヴィア!?」
アポロに支えられながら、私は意識を手放した。
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