SP dream

□離さないで 離さない 
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「雨だ…井上」
「ああ」
「少し、寒い」
「そっか?…これでどう?」
「…あ…」
「あったかいだろ?」
「…ん…雨降るたびに、暖かく、なるはずなのに…」
「ああ…」





〜 離さないで 離さない 〜




貪るみたいに抱き合った後、熱くなった身体の温度が少し下がってきた頃。

同じ毛布にくるまっていると、肩口から、お互いのぬくもりと匂いがひとつに混じり合って微かに立ち上ってくる。

それは、安心できて、そしてどこか切なくなる匂い。




いつまでもこうしていられるとは思ってない。




恐れなくてはいけないのは、このぬくもりを失うことではなくて、
このぬくもりを失うことが怖くて、なにかを見失うこと


自分が、変わっていくのが、怖い



何かを大事だと思うことは、それに縛られること

優しく、甘く、心を縛られることは、気が付くととても心地よくて



初めての感覚


愛して、愛されて


求めて、求められる


なお一層深まる気持ち





シーツの中、後ろから抱きしめて

それなのに崖から落ちていくような、それでいてうっとりするような絶望感





怖い

失うことが

怖い




眠っている気配すら寂しくて





だから






離さない







自分でも聞こえないくらいの吐息で呟く





きっと無意識の

甘い腕が
首筋に廻って



寝言のように
耳元で





離さないで?











今だけでいいから





離さないで



離さない










〜離さないで 離さない 〜

end.
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