MIST
□MIST-1-
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画面が明るくなると、ラキの姿が立体的に浮かび上がる。
ダガーを腰に縛り付けて、赤毛をフードの中から覗かせている少年。
能力値も青く浮かびあがる。
レベルは『1』。
「なぁばーさん、これってどーいう基準で決めてる訳?」
ラキが聞くと、老婆は決まりきった事だと答える。
「大体は職業ごとに平均値があるから、その値じゃ」
「……は…?ってソレって見てもらう意味無くね?!」
抗議すると老婆はゆっくりと首を横に振る。
「あくまで平均じゃ。あまりに細腕なら攻撃を減らす。もともと腕がたつ者なら能力を増やす」
「……じゃあ、俺の能力は増えてんのか!?」
ラキは身を乗り出して聞いた。
かなり期待して。
……すると。
「おぉ、お前さんは知力を減らしておいた」
しばし沈黙。
「はっ……はぁ!?ンだよそれ!?」
ラキは老婆に詰め寄り叫ぶ。もう少しで襟首を掴みそうになる所をぐっと堪える。
すると老婆は静かに言った。
「大丈夫じゃ。ラットも初期能力値は知力が低かったしの」
(……ラットってバカだったのか…?)
そこまで考え、ラキは諦め部屋を出ようとドアに歩み寄る。
老婆をの方を振り返って、何も言わずにまた歩きだした。
「アタシも随分たくさん新米冒険者を見てきたけどねぇ……潜在能力なんてのは、いつまで経っても見抜けんもんさ」
シーフの道を歩みだすラキ。
大きな夢を抱いて。
大きく、一歩を踏み出す。
これから何が起こるかは……まだ、知らない。