MIST

□MIST-1-
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「では、こちらにどうぞ」


受け付けのシーフはデスクの上のキーボードを軽やかに打つ。ラキの名前を打ち込むと、彼を奥の部屋に通した。

何をするんだろうと期待と不信感を抱きながら、ラキはその薄暗い部屋に入る。







部屋の中には小さな老婆が一人。

薄暗くてジメジメした所に、背中の丸まったお婆さんが一人、何をするでも無く椅子にもたれていた。

「……おぃ……」

ラキが話し掛けると老婆はゆっくりと顔を持ち上げ、彼を見る。

「おぉ……ちょっとそこに座りなさい」

訳が判らずラキがもう一つの椅子に座ると、老婆はもごもごと口を動かして喋る。



「お前さん、職業は何かの?」

「ん…シーフ」

(……あんだよこのばーさん…)

ラキが小さな溜め息を洩らす。

それを知ってか知らずか、老婆は構わず続ける。



「ふむ……ふむ……」

ラキを上から下まで観察すると、よっこらしょ、と椅子に座り直して言った。





「攻撃20、守備20。知力10、素早さ30、魔力0、カルマ−5、じゃ」

一息に言うと、大きな木箱から手のひら程の大きさの端末……『アビリティギア』を掴み出した。

老婆は器用に端末にデータを打ち込む。

(「なんかばーちゃんがケータイいじってるみたいで違和感有りまくりだ…」)

違和感の固まりをしらっとした目で見ながらラキは暇な足をブラブラと動かして待った。




「ほれ、出来たぞ」

老婆が差し出した端末には、ラキの能力がおおざっぱに入力されていた。

ラキは端末をもの珍しげに眺める。

シルバーの、腕時計の様な形。

かなり伸縮して用途も多そうな紐がついている。

五角形の液晶画面の側面に、スイッチらしきものがいくつかあった。

早速、電源を入れてみる。


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