MIST

□MIST-1-
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黒い、手首の所がブカッとしたTシャツに、肩の辺りまでを覆うモスグリーンのフード。白い、少し薄汚れたカーゴパンツ。

チラチラと覗く赤い長髪と、同じ色の明るい赤い瞳。

腰には小さなダガーが一本。





ラキア・リクルス、15歳。大怪盗ラットの様なシーフになるのを夢見る、少々……というかかなり小生意気な少年だ。

彼の肩にちょこんと座っている猫はスパークと言う名を貰っている。エレキテルキャットというモンスターだ。

普段は真っ黒でおとなしいのだが、これでもモンスターの端くれ、戦闘も出来る。体中から放電しての突進は威力抜群。





ラキはごく普通な家に生まれ、ごく普通に育った。至って普通な両親と兄貴の居る、貧乏でも金持ちでも無い家。






……普通過ぎて、彼にはひどく退屈だった。

ラキは幼い頃からスリルやドキドキ感が大好きで。



だから、最近一躍有名になった大怪盗ラットのようになってやる、と安易に考えて旅に出た。





兄は既に冒険者として何処かへ旅に出ていた。

5年前の話だ。

兄貴が旅に出たのと同じ年になったから、と無理矢理両親を説得し、ラキはまず一番近いシーフギルドにやって来た。



もちろん希望の職業は……俊敏さと頭のキレの良さを生かし、罠抜け・遠距離攻撃などを得意とする、『シーフ』だから。


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