MIST
□MIST-1-
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シーフギルド、MISTの本拠地。
とある世界のとある大陸にある、イルシアと名の付いた森の中にある大怪盗ラットの豪邸がそれ。
実はその豪邸もラットが盗んだものだというから驚きだ。
……まぁ、それを考えれば多少派手で不思議な趣味の館でも頷ける。
室内だというのにど真ん中に噴水のある、ギルドのロビー。天井がやたらと高く、壁にはモンスターのレリーフが刻まれている。
几帳面に並べられた長椅子に座り、シーフたちが金目の物を売ったり交換したり、情報交換をして賑わっていた。
開け放した扉の真向いに位置する窓口には、接待係の女シーフがノートパソコンに向かいキーボードを軽やかに叩いている。
――――と、15・6くらいの少年が勢い良く噴水の横を駆け抜けていった。
肩に真っ黒な猫を乗せ、浅く被ったフードの中からはチラチラと悪戯っぽく赤毛が覗く。
彼は一直線に窓口に向かうと、身を乗り出し眼を輝かせて一息に言った。
「シーフに……なりてぇんだけど!!」
髪を直すのも忘れているのか、……はたまた単にそんなの気にしないタチなのか……長めの前髪が目にかかっている。
少年が一息付くのを待って、受け付けのシーフは聞く。
「冒険者ギルドには入っていますか?」
冒険者ギルドというのは、職業に関係なく冒険者が入るギルドの事。
冒険者ギルドに入ると小さな端末が貰え、次のレベルまでに必要な経験値や自分の能力が判るようになる、というシステムなのだ。
「嫌、まだ入ってねー」
「では、新規で登録しますね。名前を教えて下さい」
彼女はペン立てから羽ペンを取り出す。
……何故登録はアナログなのかは……気にしないでおこう。
もちろんそんな事はこれっぽっちも気付かない少年は、猫を片手で支えながら。
「俺はーラキア・リクルス!!通称ラキ。未来の大怪盗だ、覚えとけっ」
生意気にも、未来の大怪盗を名乗った。