MIST
□MIST-7-
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side:URANOS&AZUSA
潮風の薫る蒼。
水面に光る魚の鱗。
久しぶりの暖かい陽気。
「うわぁー!!」
手摺りに掴まり身を乗り出しながら、飽きる様子も無くアズサは海原を眺めていた。
遥か遠く、地平線の上にはうっすらとスラッシュ大陸を見る事が出来る。
豪華客船のこれまた豪華な甲板。
何故そんな高そうな船に乗れたかと言うと……意外と簡潔な成り行きがあったりする。
「とりあえず船に乗ってスラッシュに渡らないとな」
「わぁ、海久しぶりです!」
ウラノスとアズサ、二人が立ち寄ったのはキュアルリオート最北端の漁村。
ダレスという小さな村だ。
「うわぁ――!おっきな船なのです!!」
「……大きな船?」
出し抜けにアズサが見つけた、『おっきな船』を振り返るウラノス。
桟橋に寄せている数隻の漁用の船……の中に、一隻白くてデカい船が泊まっていたのだ。
「乗ってみたいのですー!」
「……見るからに高そうだが…」
ケチっている訳では無く、食料や回復薬を買い足す分の金を計算して、の話で。
ウラノスが財布と話し合いをする。
「あら、高く無いわよ」
いつのまにか傍にいた女性が持っているチケットをおもむろに差し出す。
船が印刷された紙切れの端には『50G(ゴールド)』の文字。
「普通の豪華客船なら100Gはするわよ、お得じゃない♪」
上機嫌な女性は鼻歌を歌いながら、船の中に乗り込んでいった。
「…………」
怪しい。
何かあるから安い訳で。
「ウラノス様ー、アズサ乗りたいですー」
もう目をキラキラさせてるアズサ。
「……まぁ、スラッシュに行ければ良いか」
と、まぁこんな成り行き。
「ウラノス様!スラッシュまであとどれくらいですか!?」
興奮覚めぬといった感じで、アズサは振り返りウラノスに問う。
「明日の昼には着くらしいな」
紺色のマントをはためかせながら、ウラノスは目を細める。
全身真っ黒のウラノス、太陽の光をもろに吸収しているのだろう。
(「暑い……」)
頭に巻いていた鉢巻きを取り、髪を掻き上げる。
彼の瞳ははしゃぐアズサを眩しそうに映していた。
透き通るような空と、群青の海。