MIST

□MIST-5-
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「「「はぁぁあ〜…」」」



誰からともなく溜め息をついて、くたっとその場に座り込む。

塞いだ穴の向こうではインプとハーピーの羽音が遠くなっていく。

「はぁあ……寿命縮んだわ」

スパークがへなへなと崩れ落ちた……。





「………………痛い」

「……あ?」

怖い間を空けてぼそりと吐くプレセア。

ラキは何食わぬ顔で振り返る。



「あー…悪りぃ悪りぃ」

顎で示された手首をぱっと放す。

「……けっ!折角助けてやったってーのによ!!んとにお嬢様っつーのは困るわ」

お決まりの毒舌で非難して、おもむろに立ち上がる。



「こんな我儘女よか美女だ美女!!おらっテメーらちゃっちゃと行くぞッ!!」

そう叫んだかと思うと、ピクニックに来たガキさながらに階段を駆け上がっていった。



「…………このリュック背負わせてみよっか?」

「……否、それやるとただの小学生にしか見えなくなりますよ……」

ニールがリュックをプラプラ振りながら、一行は仕方なくハイテンションのラキを追う事になるのであった。








ぐるぐるぐる。

もう効果音はこれしか無い。

方向感覚も時間の感覚も狂って来た。



「……だぁあ!!何処まで行きゃ着くんだよ!?」

「…………あそこ?」

間の抜けた声でニールが言い、指差した。





成る程螺旋階段は天井にぶつかっていて、その部分の天井の色が違う。

丁度、屋根裏に出る戸の様な。





「うしゃあ後少しじゃん!!俺は先行ってっぞー!!」

途端に元気100倍のラキ。

ひょいひょいと階段を駆け上がっていく。





ばんッ!!と荒っぽく板をはね除け、その『部屋』に入った。









「――――――――?」










そこに『姫』は未だに生きていた。



長耳の、美しいエルフの姫。









ラキに続き皆がようやく到着する。

姫の明るい夕焼け色の瞳が、突如現れた冒険者達に向けられる。



「―――――貴方がたは―――」







――――――ビュオォォオ―――…!!



不意に突風が小部屋の中を凪いだ。

「なっ……何だよッ!?」

風は更に吹き荒れ、開け放たれた大きな窓から―――――黒光りする鱗の―――――竜が飛び込んで来た。


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