MIST
□MIST-8-
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side:MERAIM&MELCRIUS
「…………」
道中、メルは一言も口をきかなかった。
任された荷物を担ぎ黙々と歩くだけで、ミレーヌが何を言おうと話し掛けようと、無表情のままさっさと足を動かす。
キュアルリオートからアーシャラストへは海底通路を通って渡ることになっていた。
船も何隻か行き来はしているようだが…アーシャへの船はこれでもかという程高い事で有名である。
それなら、その通路を行くのが妥当といった所。
一方通行な会話をしながら、二人は海底通路の最寄りの町へと向かっていた。
目指すはレッドクラウン国、ルーイ町。
キュアルリオート大陸の最北端の町である。
陽が随分傾いた。
まあ……シャイングラスを出発したのがもう夕暮れ間近であったから、それ程時間が経ったワケでは無いのだが。
「そろそろ野宿に致しませんか?」
「……」
ミレーヌの声に、相変わらず口を閉ざしたままのメルは荷物を下ろしさっさと薪にする木の枝を探しに行ってしまった。
「……」
瞳に寂しそうな影を浮かべながら、彼女も食料を取り出しにかかった。
暫くして、枯れ木を抱えたメルが戻って来た。
ぶっきらぼうにそれを地面に放り投げると、彼は少し離れた木の幹の根元に座り込む。
「ドゥラルルアフェリアーラ……ファイアっ」
ミレーヌが呟くとボッ、と火が起きる。
間近で見る魔法に一瞬関心を見せたメルだったが、我に返り再びしかめっ面をした。
「……おい、エルフ」
ミレーヌが食べられる草をウォーターの魔法で洗っていると、メルが刺すような声色で問い掛けた。
顔を上げると、彼の双眸が鋭くミレーヌを睨んでいる。
「何ですか?」
「――何故異種族を嫌うエルフのアンタがあんな奴等と旅をする?」
メルの脳裏には人間、そして魔族の血の流れる少女が浮かんでいた。
「あの方達は私の命の恩人ですもの。力を貸すくらいはしなくては申し訳ないですわ」
「ふん、恩人だから仕方なく、か」
メルが冷たく吐く。
ミレーヌはふるふると首を横に振った。
さらり、淡い緑の髪がなびく。
「もし赤の他人であったとしても、わたくしはあの方達を好くと思いますわ。あの方達は皆仲が良くて、暖かくて…まるで家族と接するような、そんな気持ちになりますもの」