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□手を伸ばせば
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「おい、泰克」

ぽかぽかと陽気のいい正午、尚正の呼ぶ声に目を開けた。

どうやら眠ってしまっていたらしい。
浮御堂の縁側は狐の呪いがかかっているかのようにあたたかくて
気持ちいい。
昼寝するにはもってこいの場所だ。


「まったく、また大方オヤシロ殿の供え物を漁っていたのだろう」

なんとも心外だ。俺はそんなにいつもいつも手を出してるわけじゃない。
ただ、腹がすいている時だけだ。

手を出すというならお前こそ。いや、手は出してないか。
いつも俺が本気になる女は、大抵こいつしか見えていない。
しかも尚正は決まって興味がない。
俺から声をかけることが多いのだから、本当に損な役回りというわけだ。ちくしょう。
そんなにいい男かねぇ。
身も心も、慈崇のものなのに、これに惚れる女の気が知れない。


仰ぎ見れば見慣れたはずの蒼い髪は、陽に透き通ってきらきらと光る海を連想させた。
なんとなく、溺れてしまいそうで。ただなんとなく手を伸ばした。

「何をしている」

そのままぐっと引き寄せて唇と唇を合わせてみた。
なんだ。女のより柔けぇかと思ったけど、やっぱり男のもんだ。でも思ったより弾力がある。

「寝惚けるのも大概にしろ」

あ、やべ


チャキ という物騒な音がして、気付けばはらはらと赤茶の毛束が落ちてきた。勿論俺の。

「お前!尚正!毛は大事にしろ!ハゲみてぇになったらどうしてくれんだよ」

「心配ない。その前に私が斬り捨ててやる」

間一髪の所で刀を受ける。
あぶねぇ。こいつはいつでも本気でかかってきやがるから恐ろしい。

流石トオツノヒトゴロシ。

刀を交えるのが楽しくてしょうがないって顔だ。

「やれるもんならやってみろ」

そういうと尚正は綺麗な大空の目で笑った。

「望みの通りにしてやる」と。

ほんの少し、それに目を惹かれただなんて、今度こそ俺はキツネに化かされたのかもしれない。


----end

うあああ!初大尚!
大勝は本当に悪気がないんです。
多分。この2人は対立しながらも
実は仲がいいという所で萌える。
尚正が帝のもの。というのは絶対なんですけどね。


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