NOVEL
□源平 透明な音楽〜君が望む永遠〜
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第一章〜笛の音〜
いつも夢で逢えるから。
大丈夫だよ。
だいじょうぶ。
たとえ何年離ればなれになろうとも―――。
夢に見るのは、決まって笛の音。
昔よく鞍馬山で聴かせてくれた美しい笛の音。
教経は、いつも聴き入っていた。薄く月明かりに照らされた沙那王の横顔に見入っていて、笛の音が鳴りやんでもぼうっと見つめていることが良くあった。
「拍手のひとつもできないのか」
と沙那王に顔を覗き込まれてビックリして、のけぞった拍子に座っていた木の切り株から滑り落ちたことが何度もあった……。