NOVEL

□帰りたくなったよ
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「母上」
懸命に母を探す私。
探しても探しても居ない。
「母上!風車を回して下さい」
だんだん焦りはじめる私。母のものが何一つない。
なぜか、私の長持だけがポツンと置いてある。
嫌な予感。
今日、母は一緒に城を出ると言わなかった?
この緋色の着物を着て行くと言わなかった?
「母上ぇ!!!」
叫ぶ。この声が、母に届けば会える気がした。
何度も何度も。
力の限り。

母といつも一緒にいた部屋に座り込む。どこに行けば母に会えるのだろう?
「完」
「叔母上」
「今日からこの茶々が完の母じゃ」
叔母が、私に諭すように言う。だけど私は首を何度も振って否定する。
「叔母上は、母上ではありません!」
そう言って叔母の胸で泣いた私…。

それから9年ーーー。
完は、12歳になった。
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