NOVEL

□約束の指輪
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「持っていて」
彼は、白い手袋を外し、左手の薬指に付けていたシルバーのリングを外しながらそう言った。


「次のヤマはちょっとヤバいんだ」


彼は、コナンの左手を取り、静かに薬指にはめる。

が。
……指輪はかなり緩かった。


彼は、苦笑して白いハンカチーフを手に被せて小声で、ワンツーと呟く。

彼がハンカチーフをポケットにしまった時には薬指の指輪はピッタリになっていた。


「俺だと思って持っていて」

彼は、そう言って微笑んだ。



約束の指輪




あれから半年。
風の噂でもキッドの活躍する話題は聞かない。ネットでは、彼が外国で死んだなんてカキコミまであって、コナンはそんな話を聞くたびに、胸の指輪を握りしめた。
左薬指に指輪なんて周りに何を言われるか…と考えて、チェーンに通してネックレスにした。家に置いておくこともできたけど、不安で肌身離さず持ち歩いた。

あの時ーーー。

「何言ってんだ。お前を捕まえて白日の元にお前の正体を暴くのは、この俺だ。知らないやつにやられるのは腹が立つ」

コナンはそう言って、わざと鼻で笑った。

何故、あの時もっと優しい言葉をかけなかったのだろう?

あの時、キッドは少し困った感じで微笑んで俺の髪をクシャッと撫でた。

「帰って来たら一番に会いに行くから」

そう言って姿を消してしまった。

俺がせっかく手を伸ばしたのに。
もう一度彼の手を握っていたかったのに。


彼のつぶやきが聞こえた気がした。

「それでも一番に会いたいと思った。
君がたとえ僕を待っていなくても……」
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