大盛アンパンセット
□節分
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それは天使のお告げのような一言だった。
『お兄ちゃん、豆撒きしたいから鬼を探しに行こぉ☆』
節分
『……鬼は探しに行くものなのか?』
アンパンマンの記憶が正しければ、節分は家から鬼を追い出す行事だ。
わざわざ探しに行って退治する、桃太郎的行事ではないばず。
『だっていないんだもん☆』
『何言ってんだよ、男好きの鬼が家の中を年中徘徊してるじゃねぇか。』
『それはジャムさんの事かしら?』
『まぁある意味、鬼と一緒に追い出したい存在だけど、やっぱ鬼って言えばバタ……』
アンパンマンは、重力に従い落ちる滝のように血の気が退いていくのを感じた。
自分のすぐ側に、無意味に満面の笑みをたたえたバタ子が立っているからだ。
―――これからいろんな事をしたかったのに…もう出来ないのか…
少し切なくなって覚悟を決めた時、鬼は笑顔のまま口を開いた。
『どうしたのアンパンマン?顔色悪いわよ?』
『え…な、殴んねぇの?』