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□保育士柳さん
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「そうだね、まずは…弦一郎から」

「うむ」

ほう、先ほどの老け顔の奴か

「俺は真田弦一郎。このクラスのリーダー的存在だ」

自分で言うなよ

「趣味は剣道で、この立海幼稚園の武道場でしばし稽古をしている。将来の夢は立派な武士。今の目標は立派な精神と健康な肉体を作り出す為日々鍛錬を惜しまぬことだ」

…なんだこの餓鬼

顔に似合って幼稚園児らしくないこと言って

内容がなかなか腹立たしい…


「クスッ、相変わらず堅苦しい挨拶をありがとう弦一郎。これでキミへの蓮二の親愛度がかなりさがったかな?それじゃあ次は…仁王」

「プリッ」

銀髪の生徒か

どんな自己紹介をするか、楽しみだ

「俺は仁王雅治じゃ。俺が秘密にしていることは出身地。趣味は詐欺(ペテン)。標的(ターゲット)は柳生じゃが、どうしてもって言うならお前さんにしてやってもいいぜよ?」

「そ、そんな。仁王く〜ん【泣」

趣味が詐欺?

何を考えている。親の顔が見てみたい

「あ、因みに詐欺を仁王に教えたのは俺だから」

…前言撤回

というか、それは教育者?として失格ではないのか精市

親御さんに申し訳が立たん

それと、柳生…とかいったな

お前はターゲットを自分に定められていたことに驚きなのか?

それともターゲットを自分から俺に切り替えられたことが悔しいのか?

「俺のこだわりは髪型。あ、色は地毛じゃから。こだわりはこのピヨッっと出ている髪じゃ。可愛いじゃろ?」

ピ…ヨ?

「はいはい可愛い可愛い」

と、精市は軽くあしらったものの…

気になる

あの髪型もしかり、秘密が出身地というのもしかり、なによりあの口調

プリッ、だかピヨッ、だか知らないが

ふふ、興味がある


「んじゃ次ぎ、ペテンのターゲットの柳生」

「わ、私ですか!?」

おたおた慌てながら中指で眼鏡を押し上げるのが、柳生か

多少茶髪だが、他の奴に比べるとまとも(そう)な園児だな

何気に敬語だし…

「えと…わ、私は柳生比呂士と言います。あの、け、決して仁王くんのターゲットなどになったつもりはなくて…ただ、立海幼稚園に入園以来ずっとクラスが同じで仲がいいというだけで、その…」

「どもっとらんと、さっさと自己紹介しんしゃい」

ペシッと仁王が柳生の頭を叩く。

「ええっ!?あ、はい。しゅ、趣味は読書で、眼鏡はそのせいです。裸眼の視力は0.6です」

0.6で眼鏡か

ならば0.8の俺もいずれは眼鏡を考えねばならないだろうか…

暫く読書は控えるか?

「将来の夢は医者です。家業を継ぐつもりです。」

「ふむ、中々立派な志だな」

家業が医者とは、いい暮らしをしているようだな。

羨ましい限りだ

「流石柳生だね。他の二人とは大違い。それじゃあ次、ブン太」

精市は赤髪でガムを食っている生意気そうな子どもを指さした。

「お、やっと俺の出番!?俺は丸井ブン太。好物はガム。でも基本的に食いモンならなんでも好き。趣味はゲームとジャッカルいじり」

「俺かよっ!!」

「シクヨロ〜♪」

シクヨロ?

それは『よろしく』のことか?

小さい頃の語源教育は大切なはずなのだが…

はたしてこれは放っといていいのだろうか?

「まぁブン太はこんなものか」

「狽ヲえっ!!俺これで終わりぃ!?」

「んじゃ次、ジャッカル」

「俺か?」

肌の色が異常に黒く、スキンヘッドの幼児

少し変わっているな

「えっと、俺はジャッカル桑原。色が黒いのはブラジル人ハーフだから」

なるほど

「趣味は料理。親父がブラジル料理の店を経営している関係で興味を持った。弁当も半分手作りだから、後で見てくれよな♪」

「あぁ」


「まぁジャッカルもこんなものかな。後残るは赤也だけか。それじゃあ赤也」

「・・・」

「…赤也!?」

精市がクラス内を見回すと、長テーブルの端で寝ている特長のある黒髪だけを見せてうつ伏せになっている子を発見。

あれが赤也だろう。

それを発見すると、にっこりと微笑みながら精市は赤也に近づく。

「赤也、なにしてるのかな?」

耳元で優しく囁いたらしき精市の言葉に顔を強張らせながら立ち上がった。

「あ…ス、スイマセンッス!!」

「(チッ、簡単に起きちゃったか)自己紹介は赤也がラストだから、ちゃっちゃと終わらしちゃって」

「え?あ、はいッス」

しかし、寝ていたので何も考えてなかった赤也は焦っているようだ。

「お、俺の名前は切原赤也ッス。好きなことは、丸井先輩や仁王先輩たちと幼稚園で遊ぶことで、夢は真田先輩に勝つことッス!!(種類問わず)」

こいつも一応敬語を使っているようだがいまいち使い方を間違えているな。

その内正しい敬語を教えなくてはな

それより…

「精市、なぜ赤也は他のやつらを『先輩』と呼んでいるのだ?」

「あぁ、蓮二もそこ気になった?実は赤也は、他の子より一つ年下なんだ。でも、赤也は此処にいるみんなと一緒に入園し、尚且つ赤也の同年代の子が少ないからこっちのクラスに入れてるんだ。だから、他の皆は今年卒園だけど赤也にいたってはその後1年立ってから小学校へあがる予定なんだ」

「なるほど…」

「皆は気にしていないんだが、何故か本人が『先輩』というフレーズを気に入ったらしくてな。それに伴い、訳の分からない敬語を使っているんだ。傑作だろう?」

精市は赤也に気づかれないよ小さく笑ったが、可笑しいと気づいているなら言語を覚えきる前に直せよ精市!!


「えーっと、長々と訳の分からない自己紹介をしたところで柳先生がなにかを習得出来たかは定かじゃないけど、まぁ名目上できたしいいか。みたいな感じでとりあえず終わりにするね。」

いい加減だな

「それじゃあこれからお外で遊ぶから、みんな帽子をつけて玄関へ向かって。それと、弦一郎。いつも言ってるけど教室ではその帽子はずそう?ジャッカルみたいにハゲちゃうよ?」

「俺はハゲてないっ!!スキンへッッドだっ!!」

「それはポリシーとしてはずせんっ」

「(チッ、生意気)正直言うよ?俺はお前がハゲようがどうなろうがどうでもいいと思っている。しかし、幼稚園児でその顔の上ハゲてみろ?見るに見かねない。はっきり言って気持ち悪い!!」

「き、きもっ…」

「だから今度から室内では帽子ははずそうね?あ、今は外さなくていいよお外行くんだから。てゆーか今外されて熱射病にでもなられたら後がめんどくさいから。別にお前が心配なわけじゃないけど…」

「ううっ…【泣」

「それじゃ、準備できた子から砂場に言ってて。先生達もすぐ行くから」

全「「はーい」」


ガラッ

ドタドタ

ガタッ

パリッ

ペタペタ

プリッ

ピシャ

「・・・」

俺は果たしてこの職場でうまくやっていけるだろうか…?

貞治、なぜもっとマシな場所を教えてくれなかった?

しかし…

面白いデータが集まりそうだ


「あそうだ、せっかくだから蓮二の自己紹介ももう一度軽く詳しく言ってよ」

「俺か?柳蓮二。22歳。将来の夢…というか職業は保育士。趣味は読書とデータ集め。今の心境…一抹の不安」


続く
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