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□保育士柳さん
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精市はドアを開けた
その瞬間、聞き慣れないざわめきが俺の聴覚を支配する。
(ただ単に園児がガヤガヤ騒いでいるだけ)
「みんな。遊ぶの止めて、自分の席に着こうか」
精市が爽やかに優しく部屋の中にいる園児に声をかける。
しかし、聞こえていないのか無視しているのか園児は席に着こうという気配はない。
「みんな、席に着こうか?」
先ほどと同じように、爽やかに優しく言った様に聞こえた。
だが園児たちは何かを感じ取ったのか
ピタリと今までの作業を中断し、片づけまでしっかりとし、一瞬で席に着いた。
この反応を見るに、先ほどの言葉を発した際に一瞬見えたあの黒いオーラは見間違いではなかったのだろうか…?
「みんな、注目。今日から、新しい先生がみんなと一緒に遊んでくれるって。良かったね(これで少しは面倒がなくなれば俺が通院する必要がなくなるんだけどねこのクソ餓鬼ども)」
精市は疲労の蓄積により精神科や内科の通院を繰り返しているらしい。
「コホン、それじゃあ蓮二。自己紹介を頼むね」
精市は、自分のことを名前で呼んでいいかわりに俺のことも名前で呼ぶことにしたらしい。
「今日から幸村先生と共にこの教室の担当になった柳蓮二だ。宜しく頼む」
「うむ、なかなか物腰の強そうな奴だ。気に入った」
ん?なんだこの生意気な老け顔の幼児は
「新しいおもちゃの登場かよぃ」
なんだこいつ
幼稚園児のくせに赤髪とは…
ろくな大人にならんぞ
「うっわぁ〜、先生美人ッスねぇ!!」
ふむ、人当たりの良さそうな子どもだな。
悪い印象ではないが…
あの髪は些かどうかと…
「プリッ」
こいつも銀髪…
どうなっているのだこのクラスは
たしかに個性的な奴が多いが
ここまで不良とは聞いておらんぞ
しかし、こいつのこのミステリアスな雰囲気…
なかなか興味深いな
「「よろしくお願いします」」
こいつらはスキンヘッドに七三分けか
色黒なのはともかく
クラスでまとも(そう)なのはこの二人くらいか
しかし、若いのに眼鏡とは不憫だな
「それじゃあ、今度はみんなが自己紹介しようか」