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□千歳誕生日
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「なぁ千歳」

「何?」

「お前今日何するつもりなん?」

「今日?あぁ、大晦日やからね」

「実家帰るん?」

「まさか」

「帰らんの?」

「大晦日は家族で過ごさないけん決まりもなかやし、明日の夜帰るつもり」

「ふぅん」

「なん?一緒にいたい?」

「阿呆。俺が一緒にいてやるんや感謝しぃ」

「あらま」


千歳の小さなアパートで、白石は千歳の大きな背中にもたれながら、千歳は白石を支えつつ雑誌に目を向けて話している。

「夜になったら初詣にでも行くか?」

「夜は寒いけん、たくさん着込んでかんとあかんよ」

「お前は俺の母親か」

「新年早々恋人に風邪ひいてほしい思う彼氏がどこにおるばい」

「そーか、やったらお前は心配せんでえぇな。馬鹿は風邪ひかへんし」

「風邪はひかへんばってん、白石にお熱たい」

「阿呆」

こんな会話も慣れたもので、照れたりもしない。顔赤くしない。まだ初々しかったころは一々反応して千歳によくからかわれた。

表面上冷静にしているが、内心バクバクなのは本人も自覚はしている。

「家に上着取りに行くわ」

「俺の貸してやるとよ?」

「お前のコートデカすぎんねん。あんなもん着れんわ」

「そんなデカいか?」

「190cmの男が着れるコートなんかそうそう売っとらんで」

「レアものたい」

物は言いようやな






「さっぶいな…」

コートを取りに言ってから、毎年行っていた地元の神社へ向かう。

千歳は初めてくるこの神社がもの珍しいのか、大きな顔を左右に振る。

「そんな見回さんでもえぇやろ」

「けど、白石と初めての初詣やし、テンション上がるばい」

「子供みたいなやつやな」

「けど、好きな人と新しい年を過ごせるなんて幸せたい」

「せやね」

「白石も幸せ?」

「あー幸せ幸せ」

子供をあやすような言い方だけど、千歳は満足そうに微笑む。

それは千歳が白石の心の内を分かっているから。
白石もそれを分かっているから多くは言わない…のだろう



「なんか食べる?」

「夜食うと太るで」

「んじゃ寒いから甘酒でも飲まん?」

「酔うてまうわ」

「俺に?」

「…」

千歳も大阪のノリにハマってきたか、どこでもボケをかましてくるようになった。

が、いまいちノりにくいのは何故?

「甘酒ぐらいで酔ったりせんって、ホラ、一杯だけ」

どこから持ってきたのか両手に甘酒の入った紙コップを持って白石の隣に立つ。

「…まぁ温かいからえぇか」

それは甘酒がか

それとも受け取るときに微かに触れた千歳の大きな手がか





『皆さ〜ん。いよいよ今年ラスト一分になってきました〜』

神社の真ん中にあるスピーカーからどこから放送されているか分からない女の人の声が流れてきた。

「ラスト一分やて」

「カウントダウンばい。一度やってみたかったとね」

「やったことないん?」

「今まで初詣行ったことなか」

「ふぅん。俺は今まではずっと謙也と来とったなぁ」

「今年は一緒に来んでよかったと?」

「謙也も一緒が良かった?」

「まさか」

「謙也には謙也の相手がおるし、俺にも俺の相手がおるしな」

「謙也くんも来とるかな?」

「まぁどっかにおるやろ。…なぁ、千歳」

「なん?」

「いや」

『さぁもうすぐラスト10秒です!!カウントダウンの準備はいいですか〜!?10!!』

『9!!8!!7!!』

「千歳」

『6!!5!!4!!』

「誕生日おめでと」

『3!!2!!1!!』

「好き」

「えっ!?」

『A happy new year!!』


「…」

「…」

「あけましておめでとう、千歳」

「お、お…」

「千歳…」

「俺も好きーーー」

「うわぁっ!!」

勢い余って白石に抱きつき転びそうになるがなんとか耐える。

「白石、今年もよろしく」

「はは、よろしゅう」

「来年の新年も一緒にいれると?」

「千歳がまた一つ大きくなってたらな。これ以上大きくならんでえぇ気もするけど」




end

あまり甘くもしたくなかったのですが、シリアスもちょっと…って感じなのでまぁこんな感じで。2009年もよろしくお願い致します。
誕生日おめでとう千歳サン!!

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