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□鈍感な人
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「んじゃ、俺ら帰るな。鍵当番よろしゅー」

そう言って部室のドアに手をかけたのは白石部長と千歳先輩。

「なんや白石。こない早よ帰るなんて珍しいやん」

「ん。まーな」

「デートッスか?」

俺は着替え途中のシャツのボタンに手をかけたまま千歳先輩を見た。

「そぅ「ちゃうで!ちゃうねんほんまちゃぅ「そんな照れんでもよかVv」

「照れてへんわアホっ!!」

「はぁ…」

先輩らのノロケを聞かされるぐらいなら聞かなきゃ良かったとため息をついた。

「光クンは好いとる子はいなかと?」

「あ〜…、いてますよ」

「え?そうなん?財前好きな子いてんの!?」

急に興味津々になった様子の謙也さんが俺に詰め寄ってきた


「はい、まぁ」

「どんな子?俺の知ってる子?」

「…まぁ謙也さんも知ってるんとちゃいます?」

「へぇ…可愛い子?美人な子?」

「白石より可愛か子なんおらんと思うばってん」

「お前黙っとけ」

あ、白石部長が千歳先輩の頭叩いた。

千歳先輩背ぇ高いから叩きにくそうやったな。


にしてもこのアホは…

「な〜な〜財前教え!!」

「知らん。勝手に考えといて下さい!!ほならお疲れ様でした」

中々出て行かない白石部長と千歳先輩の間を割ってドアに手をかけようとしたが、

「待てや財前!!逃がさへんで」

あろうことかこのアホ先輩は、俺のドアにかけようとした手を掴みよった。

「〜〜〜///なにさらしよんねん!!離しや!!」

「なぁ誰なん?こんなチャンスめったにないんやから話してや光チャン」

「!!!///しつこいわ!!俺の好きな奴はむっちゃ可愛くてむっちゃ美人でむっちゃ鈍感でむっちゃむかつく奴やねん!!」

死に物狂いでそれだけ言って、謙也先輩の腕を振りはらって猛ダッシュで部室から離れた。

「なんやアレ。褒めとんのか貶しとんのかどっちやねん」

「あ〜あ」

「謙也。あれはお前が悪いで。財前が可哀想やん」

「え?俺なんかあかんことゆーた?」

「光クン、落ち込んどるんやなか?」

「謙也。謝りに行き」

「ふぇ?」

「えーから行き!!」

「お!?おぅ…」










「財前!!」

自己嫌悪しながらトボトボ校門まで来たらあのアホ先輩が追っかけてきよった。

そんな俺を追い詰めて楽しいんか、ボケ

「…なんスか」

「あの、財前。悪かった」

「…なんに対して悪かったんかわかっとるんですか?」

「え?あ、そら、もちろん…なぁ?」

なぁ?やないでしょ。

絶対分かってへんやん。

顔が全然悪びいてへんやん。

「ほんま、むっちゃ鈍感なんやな」

「は?俺?なんで俺がぁっ!?」

《チュッ》

謙也さんが言い終わる前に謙也さんの胸ぐらを掴み自分に引き寄せ頬にキスをした。

流石に口にする勇気はまだあらへんから。

「あんたはほんま美人で可愛ええ人やなっ!!けど鈍感やしむっちゃむかつくねんっ!!」

告白に等しい台詞を吐き捨て、赤い顔を隠すように校門からでる。

この台詞をあの鈍感なアホ先輩が理解してくれるかは分からんけど、あの勇気ある行動の意味は分かってほしいと思いながら。




当の本人は…

「なんやねんあいつ。いきなり胸ぐら掴みよって…」

まったくわかっていない様子だ


無意識に手で覆った頬がとても赤く、熱くなっていことも気づかぬまま、

財前が走っていった校門をただ呆然と眺めていた。





end

光片想いを書いてみたくなりましたVv光が初々しい…
まだ謙也が光を『財前』と呼んでいた頃。
謙也がいきなり腕を掴んだり『光』と呼んだりするのに戸惑いながら、自分の好きな人に何も思わない謙也に少し寂しさを感じた…みたいな感じでしょうか?
分かりにくくてスミマセン!!…orz

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