アリティア騎士団と冬
□アリティア騎士団と大晦日
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……〈大晦日〉……
12月31日。
一年の最後の日。
新年の前日ということである。
タリス島(PM 7:00)
ノルン「はーい。みなさん年越しソバが出来ましたよー♪」
ドーガ「よし。全て私に任せろ」
アベル「任せるかっ!」
現在マルス達が滞在するタリス島の東の砦も、大晦日ののんびりモードに突入していた。
カイン「まあ、俺は正月になっても訓練を欠かすつもりは無いけどな」
アベル「ふーん。相も変わらず真面目だな。
正月くらい休めばいいのに」
カイン「馬鹿言え! そんな甘いことを言っていたら、いつになっても手槍が投げられるようにならないだろうが」
アベル「そ。じゃあ投げられる俺は正月はゆっくり休ませてもらうかね」
ドーガ「同じく」
フレイ「うん」
カイン「…………………………………ケッ!」
ゴードン「ま、まぁまぁ、カインさん怒らないで……」
ジェイガン「その通り。
『たんきはそんき』と言う言葉があるだろう」
マルス「そんき? そんきって何かな……」
モロドフ「では今日はマルス様にことわざについてのお話をしましょう」
マルス「あ、いやいや! じいの話を聞きながら新年を迎えるのは勘弁だよ!」
ノルン「み、みなさーん……ソバが伸びますよ〜」
カイン「ふん。手槍がなんだ手槍が!
それ以外の点では俺は誰にも負けん!!」
ドーガ「ほう……大食いでも?」
カイン「むぐっ」
フレイ「……マルス様のモノマネでも?」
カイン「むごっ!」
マルス「ちょっ! 聞いてないよそれ!!」
アベル「ま。剣だけならお前に軍配が上がるかもな?」
カイン「むぐぐ〜〜アベルめ〜〜!
今年最後の挑発か……!」
アベル「じゃあお前は今年最後の短気だな」
カイン「わかった! 受けてたつ!!
アベル! 今年最後の勝負だ!」
アベル「よーし。わかった」
ゴードン「え、今から手合わせするんですか!?」
ノルン「の、伸びますよ〜〜! おソバが」
カイン「大丈夫だ。今から挑むのは今年最後に相応しい勝負だからな!」
アベル「へ?」
★ ★ ★
マルス「第一回! アリティア軍、赤緑歌合戦〜〜!!!」
ぱちぱちぱち〜〜〜♪
アベル「挑む勝負って……歌かよ!?」
カイン「その通り! お前とは今年中、様々なことで競いあってきたが、まだ歌の勝負をしていなかったからな!」
ノルン「色んな勝負してましたよね〜」
ジェイガン「うむ。槍、剣、速さ、乗馬テク、声の大きさ、体温、ババ抜き等な」
フレイ「声の大きさと体温はカインの圧勝だったと覚えている」
ドーガ「なんだ。料理で勝負すればいいものを」
ゴードン「料理勝負ならこの前やりましたよ。
アベルさんが勝ちましたけど」
カイン「と、とにかく、歌で勝負だアベル!
なんとしても勝ってやる!!」
アベル「……いいぞ。相手してやる。面白そうだし♪」
カイン「決まりだ! よーしいくぞー!!」
ノルン「ねえゴードン。どっちが勝つと思う?」
ゴードン「……アベルさんかな」
ノルン「やっぱりそうなる?」
ゴードン「いつも通りならね」
ノルン「うーん……カインさんも意外と上手かったりして……。
ところでゴードンは歌は得意?」
ゴードン「はは。どうかなぁ」
ノルン「私は得意だけど♪」
ゴードン「……む。そ、そうなのか。
実は、僕もそれなり……」
ノルン「そうなの? ふふ……でもゴードンには負けないよぉ♪」
ゴードン「……むッ! ぼ、僕は昔、近所で『歌のゴーちゃん』と呼ばれたことがあってね……」
ノルン「それなら私も小さい頃から『赤いカナリア』って呼ばれてたよ?」
ゴードン「……」
ノルン「……」
マルス「赤組ーー!
カイン! ノルン!」
カイン「勝負だアベル!」
ノルン「負けないよー!」
マルス「緑組ーー!
アベル! ゴードン!」
アベル「ふふ、流行り曲を唄わせて俺に勝てると思うなよ」
ゴードン「弓じゃ互角……! なら歌で……!!」
マルス「審査員ーー!
フレイ、モロドフ、ジェイガンーー!!」
フレイ「いつの間にか組になってますな」
モロドフ「うむ。若い者は闘争心が強すぎていかんな」
ジェイガン「まったくですな。年末に騒々しい」
マルス「司会は僕、マルスだよ。
では勝負に移ろうか」
カイン「よし。まずは俺の歌からだ。
俺が唄うのは燃え上がるアリティア軍人の魂の一曲!『アリティア軍歌』!!」
アベル「ふ……お前らしいな。
なら俺が唄うのは爽やかな流行り曲だ。
グルニアの戦車兵が作詞したと言われる『木馬ライダー』!」
カイン&アベル
「勝負――」
マルス「あ、待って」
カイン「は、はい? なんですか??」
マルス「その前に前座があるんだよ。
勝負はその後ね」
アベル「前座……ですか? 一体誰が……」
ドーガ「私だ!」
アベル「お前かよ!!」
ドーガ「歌勝負の前に前座があるのは常識だからな。お前達の勝負の前に余っている私が唄う」
マルス「……そうなの? 前座って常識なの?」
モロドフ「ではマルス様、今日はあなたに常識についてのお話を……」
マルス「や、やっぱりやめて」
カイン「ふむ。ならば仕方ない。
唄ってくれドーガ」
ドーガ「任せろ。
私が唄うのは私自身が作詞・作曲した曲だ。
『カツ丼食いてぇ』……心を込めて唄います!」
アベル「ちょ……! それ、ただのお前の願望――」
ドーガ「カァつドォん食わせェぇェぇー〜ー〜♪♪♪」(音痴)
ドーガ以外「「ぎゃああぁぁぁ〜〜!」」
響き渡る轟音、轟く壊音! ドーガ以外は……彼のあまりの歌声に倒れた。
アベル「ドーガって……」
カイン「こんなに……」
ゴードン「歌が……」
ノルン「下手……」
マルス「だった……」
ジェイガン「の……」
フレイ「ね……」
モロドフ「……!……」
バタッ……
赤緑歌合戦、大晦日に催されたその勝負は結局……選手戦闘不能による引き分けに終わったのだった……。
★ ★ ★
4時間と50分後……
アベル「はぁ〜〜ひどい目にあった……」
ドーガ「まったく。何を寝ていたのだお前ら」
カイン「やかましい!」
フレイ「う〜……我々は完全にとばっちりですな……」
ジェイガン「全くだ……私の耳をおかしくする気か……!」
マルス「やれやれ……。
あれ? そういえば夕飯食べたっけ?」
モロドフ「……この老骨の記憶力がまだモウロクしていなければ……食べてませんな」
ノルン「……あっ!!
年越しソバ!!」
カイン「うお! 伸びきってるぞ!!
なんだコレは!! 別の食いものか!」
ゴードン「そ、そんなぁ〜〜!」
ドーガ「まったく、ひどいじゃないか。
ソバは伸びてない方が旨いぞ。伸びていても食べるが」
アベル「お前のせいだーーーー!!」
伸びきった麺のように
来年もアリティア騎士団に長くて太い縁があれ……
これは、まだマルスがタリスに滞在していた頃のお話である……。
‐タリス城‐
シーダ「さぁ、サジ! もうすぐ来年よ!!
この鐘をハンマーで108発叩いてね♪」
サジ「了解でやす!
いや〜年始から重労働でやすね〜〜♪」
マジ「うるせぇやぃ!! オレぁ、ハンマーが装備出来ねぇんだ畜生ォ!!」
バーツ「俺はハンマーを買う金もねぇよ……」
カシム「やぁバーツさん! 僕が送った『年末・年始セット』は気に入って頂けましたか?」
バーツ「うるせぇ!! こういうのをネガティブオプションって言うんだよ!!」
オグマ「じゃあなんでお前は素直に金を払っているんだ……」
END