銀魂短編
□花をあげよう
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俺がアイツと別れてから何年たつだろう。
一度も会えなかった彼女は、
どうやらこの春、結婚するらしい
「山崎ィ、お前宛てでさァ」
事務処理をしている最中、いきなり開いた襖から沖田さんが顔を出した。
「いやー、お前みたいな地味にも忘れず手紙だしてくださる馬鹿いるんですねィ。」
「全く嬉しい限りですね。わざわざ届けに来てくださってありがとうございます」
「どういたしやして」
沖田さんは何か良いことでもあったみたいで、気分を相当良くしながら去っていった。
…俺が田舎から上京し、会えない日々が続いても、いつも必ず、俺の心の片隅にいて、そして俺を支えてくれた彼女。
思いを打ち明けることも叶わないまま、俺は田舎を出た。
そんな彼女からのとてもとても久しぶりな便り、その内容は、「結婚することになりました。」ただ、それだけだった。
プリントされたクマの新郎新婦のイラストがかわいらしい。
「………ははっ」
俺は思わず、笑いが出た。
これさあ、もし、俺がアンタのことをなんとも思ってなかったら、「ふーん、結婚するんだ……それで?」ってなっちゃうよね
便りの宛てが俺だったから、
…こうやって喉から込み上げるモノがあるんだ。
俺はその込み上げたモノを無理矢理飲み込み、なんとでもない風にした。
そうか、アイツ、結婚するのか。
俺もそろそろいい年なんだし、いい女見つけて、結婚しなきゃな。
思った以上に、悲しくなかった。
もちろん、嬉しい訳でもないんだけど。
空を見ると、どこかのちびっ子が遊んでいるのか、たくさんのしゃぼんだまが飛んでいた。
それにアイツの姿が映った気がして、また泣きそうになったけど、結局泣けなかった。
花をあげよう
(花を買ってあげて、アイツと夫さんの新居の玄関にでも飾ってもらいたい)
…………………・
あとがき
あぁんもうやり切れない気分
ヤルセナーイ