銀魂短編

□落としたサイフと共に僕のもとへ
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"二度あることは三度ある”

俺はあまりこのことわざを信じない。

だって三回もラッキーなことが起きるなんて幸せな人生はまずないし、

同じ失敗を三回も繰り返すバカもそういないと思う。







ピンポーン

『すみませーん……依頼頼みたいんですけどー』


え、まじ?

今日、新八も神楽も出かけちまってんだけど。

これ、アレか?
俺が接客しなきゃいけないカンジ?

つーかなんで依頼したいんだったらいきなりウチにくんなっつーの。

完全予約制なんだよウチは。まずは電話だろーがよ。

そーすりゃ新八だってウチにいたのに。

ああもう、なんでアイツ今日に限って河川敷行ってんだよ。

お通ちゃんの応援の練習とかしても、どうせお通ちゃんはテメーらイモムシのことなんか見てねーんだよ。

あーもうめんどくせー
なんだよこのクソ寒い時期によー…チャッピー捜せとか言いだしたらソッコー追い出してやろ。っつーか、もういいんじゃね?居留守使っても、いいんじゃね?

『すいませーん!依頼頼みたいんですけどー!!』
「ああもうはいはいはい!!今でます今でますー!!」


ガラッ

「はいお話聞きたいんで中に入って下さいー」

『失礼します』

ん……?

この子、なんか前に見たような……?

「…えーと、ここテキトーに座ってください、あと依頼内容教えてくださいー……っとお茶お茶」

新八がいないから、俺がいれなきゃダメなんだ。

ちきしょー、新八がケータイ持ってたら、すぐに呼び出したのに。

俺は冷蔵庫に向かうが、依頼者は構わず喋りだした。


『えーと…実は、サイフ…落としちゃって…』

「あーら、そりゃ大変だね」

コポコポコポ……

冷えたお茶をグラスに注ぐ。

本当は、この季節なら温かいお茶を出さなきゃなんねーんだが、もうめんどくせー。

「…で、落とした場所とかに心辺りない?」

『えーと…心辺りがある場所は、さっき自分で探してきたんですが、無かったんです』

「そっかー、はい、お茶どうぞ」

『あ、どうも』

…これ、アレじゃん。チャッピーを捜せと対して代わんない。

つーかなんで万事屋なんだ。


交番行けっつーの。




………………あ、

思い出した、こいつ…


「………あの、」

『はい?』

「…おたく、前にもサイフ落としたってウチに来なかった…?」

そうだ。前にもウチに来て、サイフ落としたから捜してくれっつー依頼しに来たんだ。

そして確かその時も俺、交番行けよって感じてたんだよ


『あ、はい…』

その子は若干顔を赤くしながら答えた(あ、かわいい)

「…んま、落としちゃったものはしかたないよね。んで、どんなサイフだっけ?あ、描いてくれる?」

俺はその子に紙と鉛筆を差し出す

『はい…えーと…大きさはこれくらいでー…』

その子が描いてる間、俺は考える。

この子のサイフ、前はどこで見つかったんだっけ。

確か、くだらない場所にあったのは覚えてんだけど。



………!!

『はい!描けました!』
「カバンの中だ!!」

『えっ?』

あ、びっくりさせちゃったみたい(かわいいなー)

「いや、前は結局あんたのカバンの中で見つかったよなーって」

『ああ…、すいません、あの時はご迷惑おかけして』

「いえいえ。万事屋は迷惑をかけてもらう仕事だし」

『あ、それで、ハイ、こんなのです』

その子は、俺に絵を見せた。

うん、なかなか上手な絵だね。


……じゃなくて、

「えーとそれじゃ…とりあえず、一応、一応、念のため、カバンの中確認してもらえます?」

まあ、無いのは分かってるんですがね。一応ね。

『えー…無いと思いますよー…?』

そう言いながらその子はカバンをあさる。

瞬間、その子の動きが固まった。


「……どうしたの?」


話しかけると、その子は、

ギ、ギ、ギ、ギ、ギ
という擬音語がピッタリであろう、ゆっくりと顔をあげた。



『………すみません、
サイフありました………』


「マジでか」


『すすすすみませんっ!!ほんっとごめんなさい!!』

「…いやいやいや、そんな謝らなくても…。良かったね、見つかって。」

『はははい…本当ごめんなさいいいい…』


必死に謝るその子が、本当にちっちゃくて、かわいく感じて、あ、いいなあ、なんて思っちゃった。


『…あああの、依頼料…』

その子は、見つかったサイフから震える手でお札を取り出そうとしていた。

「あーいいよ。そんなの。俺なんもしてねーし。」

『でででも、』

「だーいじょーうぶ。」


ポン、とその子の頭に手を乗せる。(さりげないボデイタッチ成功!)

するとその子は、顔を赤らめながら御礼を言った(アレ、結構脈アリ?)

『あ、ありがとうございます……』

「…いーえー。」



では失礼しました、そういってその子は万事屋をあとにした。


その子の後ろ姿を見送りながら、俺は考える。


"二度あることは三度ある”


…今だけは、そのことわざを信じてやろうかな。

信じてやるから、またあの子がサイフ落として万事屋を訪ねてきますように。





落としたサイフと共に僕のもとへ
(サイフばっか捜してないで、たまには俺の心も捜してみて!)




その二週間後、その子はまた万事屋にやってきた。








…………………・

あとがき

銀さんって、私が書いたらなんかキャラがかわいくなります。

銀さんいじめたくなります←


 

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