銀魂短編

□ラフ・メイカー
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母が老衰で死んだ。

そのことだけで,これほど泣けるのね。

















「うっ…ひっく………お母さん……お母さん………」

もう,嫌というほど泣いたのに…

泣き止めない

「ひっく…おかぁさん…」






――――コン,コン


涙で濡れた部屋に,突然,ノックの音が転がった。





…誰にも会いたくないよ。

会える顔じゃないよ。















「……………どちら様?」


ドアは開けずに,ドアの向こう側にいるその人に尋ねる













「――名乗る程の者ではございません」




「――退,何ふざけてんの」




名乗られなくても,声でわかった。



幼い頃からの喧嘩友達だった,山崎退。







「君に笑顔を持って来たよ,寒いから入れてくれないかな?」








言っている言葉こそ惚れてしまいそうなセリフだが,完璧に退の声は笑っている。




「冗談じゃない,アンタを呼んだ覚えはないよ」

「俺だってアンタに呼ばれた覚えはないね」


声だけおちょくったように笑うのやめてくれないかな




「―――いいから今日は帰ってよ,」


そこに居られたら


泣けないじゃん

「…………………」




退は何も言わなくなると,そのまま気配を消した。





「………………ひっく」

私はまた泣き出す。







数時間後


――――コン,コン

「!!!」

未だ泣きじゃくる私の大洪水の部屋に,ノックの音が飛び込んだ

「まだ笑えない?」

まだふざけた口調のアイツの声。

「……退,また来たの?」


「ずっとここにいたよ?」

「………流石は真選組ね,気配も消せるんだ。…本当に帰ってくれないかな?」



「アンタがドアを開けるまで居るよ。ドアを開けてくんなきゃ笑顔は渡せないしね」



「……わけわかんない,アンタ,私の幼なじみなんだから知ってるでしょ?お母さんが死んだこと」



「知ってるよ,だからアンタに笑顔を持って来たんだ」



「………もう…帰ってくれない……?お願いだから帰ってよ………」




「いいや,帰らな「じゃあ消えてよ!!!…いつまでそんなふざけた喋り方してるの!?……はやく消えてよ!!!消えて!!!」



「………………」



退は黙った。でもさっきみたいに気配は消えない。



「……早く消え「そんな言葉を言われたのは」


急に真剣になる退の声


「………?」

「そんな言葉を言われたのは,生まれてこの方 初めてだ。非常に悲しくなってきた。

…………どうしよう,泣きそうだ」


「………………は?」



その後,本当に聞こえてきた退の泣き声。


おいおい,ホント冗談じゃない。


アンタが泣いちゃ仕様がないじゃん。


泣きたいのはこっちだよ


アンタなんか,呼んだ覚えないのに


やがて,2つの泣き声が重なる。








 
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