TWO!
□TWO!9
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「ちょっと待ちなせェ。アンタこの前 万事屋の旦那の妻つってなかった? なんでこのアマが娘なんでさァ」
「俺ァ銀髪が息子っつうのを聞いた」
呆然とする多串くんと沖田くん。
ぷふー、とんだバカ面だよこりゃ!!
思いきり吹き出す一方で、俺の立場が非常に虚しくなる(なんだよ旦那はいいけど息子って)
そのままで突き通せばいいのに(特に沖田の台詞)名無しさんはご丁寧にも説明する。
チッ、面白くねー。
「なんだ、ただの遊びかィ」
「遊び言うんじゃねーヨ金髪! お前にマミーは渡さねーかんな!」
「俺にゃマミーなんて必要ねェよ。とっくに乳離れは完璧なんでィ、お前と違って」
「ハン、そう言う奴はだいたい反抗期と乳離れを勘違いしてるアル!て銀ちゃんが言ってた」
言ってねェェェェ!!(神楽コノヤロー!!)
思わず乗り出した体を引っ込める。
いや、別に向かってもいいんだけど
もう少しこのまま見てもいいかと思った。
「そんで、アンタの好みがわかんねーからよ。できるだけ同じようなやつ探してきた」
「ええっ」
ビックリするのも無理はないよな。
名無しさんは聖母マリア日本バージョンな女だから、ギブしてもテイクを求めねーし。
案の定、困惑した声で名無しさんは言う(きっと顔も困ってんだろーな)
「でも、あれ、凄く安くて……(きっと今の時代じゃ安物以上の安物なんだろうなあ)」
「んなもん知ったこっちゃねー。それに、アンタがどうでもよくても、俺の気がすまねーんだよ。おら、受け取れ」
半ば無理矢理、名無しさんにそのハンカチが包まれた物を押しつける。
はー、お前何、ペドロのカンタロー気取りですか。第一印象悪いけどじょじょに良くなって仲良しになるんだぜ的な展開?
「させるかァァァァァアア!!!」
マッハのスピードで廊下を走り名無しさんの隣で器用に止まる。
他の四人は冷静に、俺の登場を見ていた。
無言ののち発言したのは、総…なんとかだ(なんだっけ、総太郎?)
「……何してんですかィ、旦那」
「なんでもねーよ、ていうかお前らいつまでいんの? かーえーれ、さっさとかーえーれ」
「銀ちゃん! お客様になんて事言うの!」
「客じゃねーよこいつら、客なんて扱いが一生似合わない柄だよ」
「一理アルネ」
「こら、神楽ちゃんっ」
瞳孔開き気味の男が更に瞳孔を開く。
アンくるかコルァ、と 眉をひそめると、そいつは黙って背中を向ける。
「邪魔したな」
「え、あの」
「こっちは仕事が残ってんだ。もう用はすんだ、総悟いくぞ」
「俺ァ仕事ねーから先に帰っててくだせェ。名無しさんさんと積もる話もある事だし」
「ねーェェェよ!! ほら帰りなさい、もうすぐ雨降ってくるから、ペドロに会えるかもしんねーよ」
しかし こいつはニヤニヤと、楽しそうに名無しさんを見る。
「いやァ、そりゃ世の中にゃ色々な人間がいるでしょうや」
「あ? 何が言いたいアルカ コルァ、はっきりしろ」
「別に。ただ、おもしれェなと」
「おもしろい?」
名無しさんが素直に聞き返すが、俺はぎくりとした。
「アンタ、まるでどっかの田舎娘か、箱入り娘みてーな感じがするんでね。あ、ケンカうってるわけじゃねーんで。どーも、この江戸に慣れきってねー感じがするんでさァ」
あ、やばいかも。
本格的にこいつ殴って色々喪失させてみようか、と思った時、救いの手を差し伸べたのは意外にも瞳孔が(さっきよりは)少し閉じた男だった。
「ウダウダ言ってねーで帰るぞ!! お前仕事ねーとかいって俺に回してんだろーが」
「そんな事ありやせんぜ、ただ気づいたらアンタの部屋に来ててついでに持ってた書類を置いて」
「何その都合いい無意識!?」
ギャーギャー言いながら外に出た二人を見送ると、すぐに閉め鍵をかける。
名無しさんはそんな俺に不思議そうな目を向けたが、俺が「なんでもない」と言うと素直に受け取り、にっこりとリビングに戻った。
手には、ぎゅっと握られたハンカチの包み。
……………。
「銀ちゃん」
「……なんだよ」
「マザコン、いい加減卒業した方がいいアルヨ」
「その口にガムテープ貼らせてくんねェ?」