TWO!
□TWO!8
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「ただ」
「名無しさんーーーーーーーーーー!!!!」
帰ってきた名無しさんを出迎えたのは、神楽の熱烈なロケットパンチだった。
ただ、パンチは脇を横に通り背中にがしっと強く回される。
その力は流石の名無しさんでもこらえきれず、絶叫しながら玄関に尻餅をついた。
「いたたたた!! かっかぐっ」
「うわあああああ名無しさんさんんん!!」
「バッおめーはがれろォォォォ!!」
離れろ、ではなく はがれろ、と銀時が言い換えるが、まさしくそれだった。
神楽は名無しさんの腹に顔をこすりつけて、「心配したのヨ!」の後に「腹減ったヨ!」と付け足した。
「ああ、ごめんねえ、結局作ってなかったわね」
すぐ作るから、と神楽をやんわりとはがすと、早速 台所に立つ。
新八と神楽はそんな微笑みにどこかホッとした表情で、ソファに座ると、続きのテレビを見る。
しかし、銀時は名無しさんの背中を見て 声をかけた。
「なんであれだけ言ったのに、出てってんだよ。心配させんじゃねー」
「ごめんごめん、色々あってね」
そこで詐欺の事、知らない男に鼻血を出させてしまったり、帰りはまた騙されそうになったけどその男に助けてもらって送ってもらった事を細かく話す。
名無しさんはキャベツを切っていた為わからなかったが、その背を見つめる銀時には鋭いものがあった。
「やっぱり銀ちゃんの言ってた通りだよ。私だけじゃ絶対お金とられてたし、危なかった。あの人に感謝しなくちゃ」
「そうじゃねーだろ」
怒りを抑えたような声に、名無しさんはビックリして振り向く。
どうして銀ちゃんは怒ってるんだろう、そんな目で見る。
その目が気に入らなかった銀時は、名無しさんの両肩を強く掴んだ。
「お前本当に事の重大さがわかんねェのか。下手したら金どころか、犯されてたかもしんねーんだぞ。なのに多串に感謝とか、そんな事ぬけぬけ言うんじゃねえよ」
「……ご、ごめんなさい」
しゅん、と うなだれる名無しさんに、銀時は今度は優しく語りかける。
本当に、何もなくて良かったと、心から思いながら。
「もう、不安にさせんな。俺は慣れてっけど、あいつら、本当に心配してたんだからな」
「……うん」
あいつら、という部分で 新八と神楽を見る。
名無しさんは落ち込んだものの、やはり 銀時を温かいまなざしで見つめた。
「それじゃ、お詫びにたんと美味しい物作らなくちゃっ」
「わかりゃいーんだよ」
フッと笑うと、銀時は台所を出た。
「銀ちゃん、何 話してたネ。もしかして今日の夕飯リクアルか! 名無しさんーー餃子がいいアル!!」
「神楽ちゃん、いい加減食事から頭離そうよ」
新八の控えめなツッコミにくすり、と笑いながら、名無しさんはふ と思った。
「……あの人の名前、オオグシさんていうのかしら」