TWO!

□TWO!5
2ページ/2ページ




「………どうも信じられんな」


 簡単に名無しさんの経緯を聞いたヅラは、腕を組んで目を閉じた。

 奴なりに整理してんだろう、今の状況。

 歳も姿もそのままで現れた名無しさんを、今更別人だと言い張るのは無理がある。

 それに、俺自身が認めたくなかった。こいつァ本物だ。口調も怒るタイミングも、昔通りで。

 変わらない名無しさんに、俺は安心している。


「そういやお前、俺の事睨んでたろ。あれか、羨ましかったのか」

「そうではない。てっきり名無しさん似のカラクリを作ったのかと思ったのだ。そこまで思い詰めているなら、俺の拳でたたき直してやろうとな」

「余計なお世話だ。お前に殴られたら直るもんも直らねーよ、特に精神的ショック」


 はい、どうぞと名無しさんがヅラの前にお茶を置く。それを一口飲んで、ヅラは息をついた。


「茶の葉は違うはずだが、名無しさんのいれたものだ。……懐かしいな」

「色々と大変だったみたいだね。ごめんね、急にいなくなっちゃって」

「名無しさんのせいではない。あれは、事故なんだろう」

「うん……。ありがとう」


 名無しさんの手が、ヅラの頭に乗る。そしてよしよし、と優しくなでてやった。

 あ、なんか胸糞悪い。


「ヅラちゃんは相変わらず優しいねえ。それに言葉遣いもしっかりしてるし、いい子になったね」

「……俺は子ではないし、ヅラでもない。桂だ」

「うんうん、わかってるよ」


 ヅラと再会したのが余程嬉しいのか、名無しさんは頭をなで続ける。

 それに我慢できなかったのは、俺よりもヅラだった。手首をとると、頭から離す。


「名無しさん、俺はもう大人だ。子供扱いはやめろ」

「ごめんね、どうしても癖が抜けきれなくて」

「…………」


 名無しさんの困った表情に弱いのは、俺だけじゃねーみてェだ。

 ヅラはわざとらしく咳をすると、立ち上がった。


「ヅラちゃん、どこに行くの。せっかくだからご飯一緒に……」

「ヅラじゃ……。……帰る。エリザベスが待っているからな」

「えりざべす?」

「今度は連れてくる。その時にまた会おう」

「けっもう来んな!」

「銀ちゃんっ」


 玄関まで見送った名無しさんは、にこやかな表情だ。

 そこまで嬉しかったのか、ヅラと再会したのが。俺にゃどうも理解できねーな。


「そんなに嬉しいもんかァ?」

「勿論だよ! ヅラちゃんに会えて、それから銀ちゃんにも会えて、私はとても幸せだよ」

「………そーかィ」


 だから、やめろよな。その顔。弱いんだから。


「次は……そうだねェ、晋ちゃんかなあ。あの子、今頃どうしてるかしら」

「………………」


 素早くジャンプを手に取り頭に乗せ寝転がる。

 答えられるわけねーだろ!!



 
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ