TWO!
□TWO!5
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「………どうも信じられんな」
簡単に名無しさんの経緯を聞いたヅラは、腕を組んで目を閉じた。
奴なりに整理してんだろう、今の状況。
歳も姿もそのままで現れた名無しさんを、今更別人だと言い張るのは無理がある。
それに、俺自身が認めたくなかった。こいつァ本物だ。口調も怒るタイミングも、昔通りで。
変わらない名無しさんに、俺は安心している。
「そういやお前、俺の事睨んでたろ。あれか、羨ましかったのか」
「そうではない。てっきり名無しさん似のカラクリを作ったのかと思ったのだ。そこまで思い詰めているなら、俺の拳でたたき直してやろうとな」
「余計なお世話だ。お前に殴られたら直るもんも直らねーよ、特に精神的ショック」
はい、どうぞと名無しさんがヅラの前にお茶を置く。それを一口飲んで、ヅラは息をついた。
「茶の葉は違うはずだが、名無しさんのいれたものだ。……懐かしいな」
「色々と大変だったみたいだね。ごめんね、急にいなくなっちゃって」
「名無しさんのせいではない。あれは、事故なんだろう」
「うん……。ありがとう」
名無しさんの手が、ヅラの頭に乗る。そしてよしよし、と優しくなでてやった。
あ、なんか胸糞悪い。
「ヅラちゃんは相変わらず優しいねえ。それに言葉遣いもしっかりしてるし、いい子になったね」
「……俺は子ではないし、ヅラでもない。桂だ」
「うんうん、わかってるよ」
ヅラと再会したのが余程嬉しいのか、名無しさんは頭をなで続ける。
それに我慢できなかったのは、俺よりもヅラだった。手首をとると、頭から離す。
「名無しさん、俺はもう大人だ。子供扱いはやめろ」
「ごめんね、どうしても癖が抜けきれなくて」
「…………」
名無しさんの困った表情に弱いのは、俺だけじゃねーみてェだ。
ヅラはわざとらしく咳をすると、立ち上がった。
「ヅラちゃん、どこに行くの。せっかくだからご飯一緒に……」
「ヅラじゃ……。……帰る。エリザベスが待っているからな」
「えりざべす?」
「今度は連れてくる。その時にまた会おう」
「けっもう来んな!」
「銀ちゃんっ」
玄関まで見送った名無しさんは、にこやかな表情だ。
そこまで嬉しかったのか、ヅラと再会したのが。俺にゃどうも理解できねーな。
「そんなに嬉しいもんかァ?」
「勿論だよ! ヅラちゃんに会えて、それから銀ちゃんにも会えて、私はとても幸せだよ」
「………そーかィ」
だから、やめろよな。その顔。弱いんだから。
「次は……そうだねェ、晋ちゃんかなあ。あの子、今頃どうしてるかしら」
「………………」
素早くジャンプを手に取り頭に乗せ寝転がる。
答えられるわけねーだろ!!