TWO!

□TWO!4
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 スーパーは 外とは比べものにならない程の涼しさで、急激な気温の変化に 体が震えた。

 神楽は傘をたたんではしゃぎ回り、新八はそれを止めに走る。

 残された俺はかごを手にとり、名無しさんの隣に立った。


「んで、メニューはどうすんだ」

「ご安心を。こういうジリ貧生活には慣れてますから」

「おう、頼りにしてるぜ」


 そしてブツブツと、献立について呟く名無しさん。完璧に母親じゃねーか。

 ……あれ。待てよ。てェことは、今こいつの隣でかご持ってる俺はなんだ。


「どうしたの銀ちゃん、黙っちゃって」

「いや。そういや年齢的に俺らオイシイよね、という」

「え?」


 大丈夫、銀ちゃん。そう本気で心配してくる名無しさんをうまくかわしていると、後ろから「旦那ァ!」と呼びかけられた。

 んだよ誰だコルァ、と不機嫌に振り向くと、あーなんだっけ、名前出てこねー。


「君は確か……ジミー君か。山のつくジミー君か」

「何その曖昧な思い出し方! 山崎ですよ、山崎退! …あれ、そちらの方は?」

「別に誰でもいいだろ。なんの用だ、用ねーのか、そうか」

「まだ何も言ってないんだけど!!」

「あら? そのかご…」


 名無しさんがひょい、とかごの中をのぞき込むと、大量の野菜が入っていた。

 それを見て天然娘は、目を丸くしてジミーを見上げた。


「お若いのに苦労しますねえ、大家族なんて」

「えっ? ああ、違いますよ。俺、買い出し係だから」

「名無しさん、この世にはパシリというとてつもなく可哀相な単語があるんだ。それを言いたくない奴はだいたい買い出しって言うんだ、覚えとけ」

「旦那、いい加減にしてください(当たってるのが余計にむかつく!!)」


 んで、なんの用だよ。そう問うと、ジミーは声をひそめた。

 周りに誰か聞き耳をたてている奴がいないか確かめてから、「あのですね、」と手を口に添える。


「旦那があの桂の野郎とつながってるって、副長が疑ってるんですよ。まあ俺は疑ってませんけど(前に潜入して散々な目にあったからもう疑いたくないし)」

「…へェ。別に、アイツに信じてもらいたくもねーけ」

「桂?!」


 名無しさんが素っ頓狂な声をあげ、俺はすぐに口をふさいだ。

 そうだ、コイツ ヅラが指名手配犯だって知らねーんだった!


「? 旦那、この娘さんは…」

「そりゃお前あれだよ、アレ。別に何もねーよ」

「でも、桂にすごく反応が」

「悪いかよ、桂で反応して悪いかよ! それなら反応してないのが良いってのかアン?!」

「えっいや悪くないですけど…!」


 俺のもの凄い剣幕におされるジミーは、名無しさんを一瞥した。

 鈍い女とはいえど、さすがに何かあると思ったのか、開放された名無しさんはにっこりと言いつくろう。


「すみません、銀ちゃんがカツラを愛用してるのかと思っちゃって」

「それ酷くない?」

「ああ、そうだったんですか。いやいや違いますよ、俺が言ってるのは人間の桂です。テロリストとして指名手配されてるんで、気をつけてくだ あッだァァ!!!」

「…………えっ…あ、はい。わかりました。ありがとうございます」


 無言でジミーの頭をはたき、退散させた。

 あの野郎、地味なくせに重大な事をさらりと言いやがって。

 おかげでさっきまで 食事に集中していた名無しさんが、沈んだ表情を浮かべていた。


「…銀ちゃん、どういうことなの? ヅラちゃんがテロリストなんて…ていうか、テロリストって何?」

「そこかよ。あっ 俺今初めてツッコミした気がする」


 まあー、大ざっぱに言いやァ 爆弾魔みたいなもんだな。

 そう言うと名無しさんはぎょっとした目つきで俺を見上げ、「まさか」と呟く。


「そんな、ヅラちゃんが……いつも素直で良い子だったのに」

「何もわかっちゃいねー母親はみんなそう言うんだよ。今のヅラは 変人だ。元から変人だったけど、変人の変人だ。人妻好きだしペット好きだしキャプテンだし」

「銀ちゃん! いったいヅラちゃんに何が起きたの?!」

「天変地異」


 これ以上ヅラの話をしたくなかったから、適当に答えてやる。

 真剣な声で「天変地異」と呟く名無しさんの頭を、こづいた。


「んなわけねーだろ。帰るぜ、ほら」

「あ、うん」



 
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