TWO!
□TWO!2
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朝食がすんだ後、名無しさんさんは下の階に降りた。
ついて行くとお登勢さんの仕事場で、「おはようございますお登勢さん!」と元気よく挨拶する。
奥からやって来たお登勢さんは、だるそうな表情で名無しさんさんを見た。
「またアンタかィ。よく根もあげずに頑張るねェ」
「当たり前です、うちの銀時がいつもお世話になっている挙げ句、家賃を払っていないなんて、とんだ不始末ですから」
この不始末は親代わりの私が、きちんと果たさなくては。
そう豪語する名無しさんさんに、お登勢さんはうっすらと目元を和ませた。
お登勢さんは名無しさんさんが昔の人だとか、そういう詳しいことは知らない。
明らかに銀さんのほうが年上で、母親代わりだと自称する名無しさんさんは可笑しい。
けれどそういう所はまったく突っ込まずにいてくれるのが、ありがたい話だ。
「それで、今日は何をすれば良いでしょうか」
そして お登勢さんのおつかいや配達を頼まれて3日目。
わからない時は僕らに頼るけど、名無しさんさんはできるだけ自力でお登勢さんの任務をこなしている。
……すごい真面目だなあ(こんな女性、他にいるのだろうか)
「そうだねェ……。ああ、そういえば これを忘れていたよ」
いったん奥に下がり、また戻ってきたお登勢さんが持っていたのは、ネクタイだ。
昨夜 べろんべろんに酔っ払っていたお客さんが忘れていったものらしく、届けてほしいという。
「でもねェ、それがどうも怪しくて」
「怪しい? 不審者なんですか?」
「いや、そうじゃないよ。話で職業の話題になったんだけど、その客、どうも幕府関係らしくてねェ。お迎えの人間も、武装警察の奴らだったよ」
ぎくっとする。
名無しさんさんは、そうだ、元をたどれば攘夷浪士と顔見知り。
もし(いや、どうせスリップとか信じてもらえないだろうけど)バレたら、危ない。
しかも武装警察といえば、変態の集団としか言いようがない、あの真選組じゃないか。
断ったほうがいい、と言う前に、名無しさんさんは「大丈夫です」とにっこり笑った。
「ネクタイを渡してすぐ帰れば良いですし」
「そうかィ、それなら頼むよ。名前は松平しか知らないんだけど、この名字だけでわかる奴にはわかるんだってさ。すごく自慢されたよ」
フンと鼻で笑って、お登勢さんは「それじゃ頼んだよ」と 消えていった。
……………これは、この行き先は、どう考えても。