TWO!
□TWO!13
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「あーもしもし? 万事屋ですけどお」
腹ぺこだし名無しさんが帰ってこねーし(チクショーやっぱついてきゃよかった!)でイライラしてる時にかかってきた電話。
もし依頼だったら即刻断るか明日に引き延ばしてもらおう、そうしよう。
固く心に決めて受話器をとった俺を待っていたのは、やかましいBGMに紛れたアイツの声だった。
『もしもし、銀ちゃん? 名無しさんだけ』
「んなもん百も承知だ! 何やってんだお前、どこで油うってんだコノヤロー! そっから動くなよ、迎えに行くから」
あいつはケータイを持っちゃいねーから、多分どっかの公衆電話からかけてんだろう。あれ、でもそれなら普通静かじゃねーか。どっかの建物の中か?
『あ、それなら神楽ちゃんと新八くんも連れてきてくれる? あと私の割烹着も持ってきてくれないかな』
「わーったからそっから、……は?」
後半の部分を聞きとがめる。いや、迎えに行くのになんで割烹着? おかしくね?
しかしそれは、次の台詞で理解できた。
『場所はね、真選組屯所っていう所だよ』
「ハアアアアア!?!! あのヤクザと警察官の間の野郎どもが集まってる所か?!」
『前に、銀ちゃんと一緒に行った事あるよね? ちゃんと来れる? 迷ったらこの電話に連絡し』
「うるっせェェェエよ! 迷い子のお前に言われたくねーよ! とりあえず言わせろ、お前なんでそこにいんの?」
ていうか俺主人公だから、舞台のかぶき町の住人何十年やってると思ってんだよ。そう思いながら聞いた名無しさんの話は大半がスイカの知識で、最後らへんにぽつりと、まるでPS的な扱いで、
『で、山崎さんがすいかのお礼に屯所でご飯とすいか どうですかって誘ってくれたの。だからいるんだよ』
「俺が聞きたいのそこォォォ!! なんで一言で終了してんだ! スイカの方を一言でまとめろや!」
しかし、理由はなんとなくわかる。こちとらガキん時から名無しさんの金銭に対する頭の回転の速さは見てきてんだ(貧乏ってほんと、悲しいよね)
「どうせお前、材料はやつら持ちだから金使わなくてすむとか、そんなんだろ」
『………だって、私のかごも一緒に払ってくれたんだもの。そこまでされちゃ、断るわけにもいかないよ』
素直に認めない言い訳ぶりに、笑みがこぼれる。どうやら子供に図星をつかれると素直に認めたくねーらしい。
しゃーねェ、このまま狼集団に名無しさんを渡すわけにもいかねーし。
電話を終えて、俺は割烹着を片手に、点いていたテレビを消した。その時、タイミングよく新八が帰宅する。
「定春の散歩終わりましたよー。あれっ銀さんどっか行くんですか?」
「おう。おい、神楽起きろ。飯だ飯。外食だぞー」
「外食!!」
ぱちっと目が覚めた神楽と、かえって不審がる新八に、俺はのびをしながら言った。
「お前ら、しばらく何も口に入らねーくらいにたんまり食えよ。腹にみっちり米つめてこい」