TWO!

□TWO!12
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「山崎、マヨネーズ入れたか」

「はい、ばっちりです」


 元気よく答えたものの、心中はため息でいっぱいだ。食費の30%がマヨネーズっていうのはなかなか笑えたもんじゃない。ありえないよ、30%が個人とか。

 いや、ありえない事はもっとある。この現在だ。今までさんざん俺を使いっぱしりにしていた副長が最近、一緒に夕飯の買い出しに来るようになった。本人は「マヨネーズ買ってるか監視してんだ」とか言ってるけど、監察型の俺は騙されない。よくスーパーに来る人に会いたいんだ。だってスーパーには来るけど、買い物にはまったく口を出さず、周囲に目を向けてばかりだし。

 この人に限って一目惚れとかはないだろうけど、でももしそうだったら、沖田隊長に報告しちゃおうかな。それともこれを逆手に、……は無理だ。死ぬ、俺が。

 そんなくだらない事を思いつつ、買い物かごを持って野菜を選んでいたけど、見分けがサッパリつかない俺はひょいひょいと手にとり、かごにおさめていった。そして沖田隊長からのリクエスト、スイカのコーナーに行く。


「これでいっか」


 適当にスイカに手をのばした時、にゅっと別の手がのびてきた。その手は俺がとるはずだったスイカを手に取り、片方でスイカを持ち、もう片方の握り拳でコンコンと軽く叩いた後、「ダメね」と言った。

 え、と無意識にその手を目でなぞっていくと、隣にいたのはあの万事屋だった。いや、正しくは万事屋の旦那といた女性だ。

 名前は、なんだっけ・・・。旦那が言ってたような気がするけど、覚えてない。

 けれどあちらの方は違っていた。ばちっと目が合った後、「あら山崎さん」と真剣だった表情から一変、破顔する。うわ、可愛いなあ。ていうかちゃんと覚えててくれたんだ。


「こんにちは、今日もおつかいですか?」

「いやあの、おつかいっていうのやめてくれます? ちゃんとした買い物なんで」

「あら、ごめんなさい。銀ちゃんがパシリっておつかいみたいなものって言ってたから、鵜呑みしちゃって」


 どうやらこの人は、わざとボケたつもりじゃないらしい。常識人が周りにいない為、突然の謝罪に困る自分がいた。

 いやいや、と両手を振った時、ふと思いついた話題。


「そういえば、どうしてスイカ叩いてたんですか?」

「ああ、これ?」


 手元のスイカを、またノックすると、丁寧に説明してくれた。


「叩くとね、美味しいすいかかどうかがわかるの。食べ頃だとボンボンって響いて、未熟のすいかはポンポンって高い音がするのよ」

「へえ。あれ、でもこれ低いんですけど」


 俺もスイカを片手で持ち、叩いてみるとドンドンと鈍かった。彼女はそれに対し、「それは熟れすぎね」と即答する(すげえ、この人スイカのプロ?!)


「でも、音だけじゃわからない時もあるでしょ。ボンもポンもドンも似たようなものだし」

「そうですね」

「そこで、すいかそのものを見てみるのよ」


 よいしょ、とスイカを反転させ、しりの部分を指さした。花落ちという部分らしい。


「おしりの花落ちが小さかったり、縞模様がくっきりして つやがあったり、触ると少しざらざらしてると良いすいかなの。山崎さんのすいかはどう?」

「え? えっと」


 慌てて確認してみると、偶然な事にすべてが一致していた。それになぜか嬉しさを感じる。どうやらジミーでも運はあるらしい。


 
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