TWO!
□TWO!10
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8月も終わりに近付いてきた日、僕はいつも通り万事屋にやって来た。
朝だからまだ涼しい、けどこれからどんどん暑くなるのかと思うと気が重い。こんな暑い日に限って、外の調査とかあったりするんだよなー。まあ、仕事がなくて暑い事務所でゴロゴロするよりはお金も入るしマシだけど。
手に持った袋を見下ろす。今日はおみやげ付きだ。姉上から「阿音ちゃんにもらったんだけど怪しいから万事屋さんに」と押しつけられた、おまんじゅう。あの姉上が敵対視する相手だから、このまんじゅうにはカラシ入りだのワサビ入りだのが入ってるんだろう。
「おはようございまーす」
ガラガラと扉をどかして玄関に足を踏み入れる。ここで大体、名無しさんさんがわざわざ来て「おはよう、暑い中大変だねえ」とニコニコしながら迎えてくれる。
そして「新八くん」と玄関にやって来た人物は、……二人(ええ!?)
さっちゃんさんじゃないか!!
「新八くん、おはよう。今日もお疲れ様」
「ああ、おはようございます。えっとこれ、姉上から」
「まあお饅頭! ありがとう!」
もらった箱を開け、すごく嬉しそうに笑う名無しさんさんを見て、罪悪感という苦しみが襲いかかる。名無しさんさんには、割った方がいいと指示しよう(後の奴らはどうなってもいい)
「お姉さんにお礼言っておかなくちゃ。新八くん、今度万事屋にお姉さんも誘っておいでね」
「はい、わかりました」
そういえば姉上も、名無しさんさんに興味あるみたいだったし。夜の仕事が休みの翌日なら疲れてないだろうから、言ってみよう。
そう思いながら「お邪魔します」と床に足をつけた、その時。
「お義母さま、私がお持ちします」
「あら、気がきくねえ。ありがとう」
……………え。
「あの……さっちゃんさん? お義母さまって……」
「当たり前でしょ、未来のお義母さまなんだから」
「だァからちげーーーーってんだろォォォォォォオオ!!!」
あ、銀さんきた。どうやら今日は、今までの朝とは違うみたいだ。
ていうか、部屋に入らせてほしいんだけど。僕まだ片方の草履脱いでないしね。
「俺はこいつを母親なんて認めちゃいねーよ! つかオメーも嫁じゃねーだろ、帰れ」
「フフ、銀さんったらいつまでそんな妄想抱いてるのかしら。そりゃあ夫婦よりも彼女彼氏だった方がドラマチックでドキドキしちゃうけど、でもね、現実を見て」
「現実見るのお前だから!! 妄想抱いてる奴に妄想疑われるのすっげー腹立つから!!! おい名無しさん、お前母親ぶんのは俺以外の奴にしろ」
「銀ちゃん、昔も素っ気なかったけど今も素っ気ないのね。少しは親孝行してくれたっていいじゃない、お母さん傷ついたよ」
「銀さん、家族にまでサドなんて……! お願いだからお義母さまはいじめないで、いじめるなら私にしてちょうだい!!」
「あああああまじで面倒くせェこの展開!! 新八、お前なんかやれ!」
「僕にふらないでください。だいたいアンタがはっきり言えばいいんでしょーが、何もかも」
銀さんが名無しさんさんを「オカン」ではなく「女性」として見てるのは百も承知だ。それを言えばいいのに、銀さんはなぜかそれを言わないし言葉が乱暴だから、名無しさんさんはそれを素直に受け取ってさっきみたいにショックを受ける。
僕だってやってらんないよ、こんな展開。やきもきさせるなあ、本当。
「さっちゃん、貴方本当にいい子だね。こんな乱暴な息子なのに、見放さないなんて」
「当たり前ですお義母さま、私そんな銀さんだからついて行こうって決めたんです」
「おーい、なんだこの雰囲気。明らかに家族じゃね? 俺ぜってーこんな家庭やだからな、ぶっ壊すから!!」