TWO!
□TWO!9
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仕事の依頼もなく、俺達はうちわと扇風機を奪い合ったりゴロゴロと床に寝そべったり、名無しさんが作ったかき氷を一口で食べ終わったり、とにかく暇で暇でしょうがなかった。
電気代のかかるテレビは点けられてない。
「あーちくしょう24時間テレビ見てーのに」
「駄目だよ。24時間も見るなんて目に悪いし、電気代がかかるでしょう」
「だァから言ってんだろ、24時間っつうのはテレビ局側がする事であって俺らは24時間ぶっ続けて見るわけじゃねーんだって」
「そう言って続きが気になって結局 長時間見たの誰ですか銀さん」
「神楽ァ、新八の口にガムテープ貼ってもいいぞ〜」
ギャアアア!!の悲鳴をきれいにスルーし、俺は名無しさんがかき氷を作るのを眺めていた。
ううん、と力を入れて取っ手を回している姿が妙に笑える。
「くっ……! もう、固…銀ちゃん、何ニヤニヤしてるの。お母さんが困ってるのに手伝ってくれないの?」
「誰がかーちゃんだ。しゃーねェな、手伝ってやるよ」
俺が取っ手をたやすく回すのを見て、名無しさんは悔しがるかと思いきや、片頬に手をそえてため息をつく。
「銀ちゃん……本当に立派になって」
「だからやめろや母ちゃんぶんの! 腹立つんだけど、俺いっとくけど今のアンタより大分年上なんだけど!!」
「今は、でしょ。昔、夜は便所にも一人で行けなかったくせに。やっぱり子供ねえ」
俺がどんなに「子供」から抜け出したいと思ってるのか、この女はまったくわかっちゃいねえ。
くっそー腹立つうううゥゥゥァァアア!!
「ぬごををををを!!」
「すごいヨ銀ちゃん、氷があっという間にガシャガシャネ! いっただっきまーす」
「俺の分も残せよおいィ!!」
やかましくなってきたその時、ピンポーンと場違いな音がした。
出る気がない俺らにかわり、名無しさんが腰をあげる。
宅配便かそれともキャサリンかババアか、と思っていた分、このむかつく来訪者に俺は状況を飲み込めなかった。
「あら、どうも。その節は お騒がせしました」
直後、だらけきっていた俺と神楽は素早く バレねーように玄関をのぞきこんだ(新八は身体中ガムテープで苦戦しているから無理だ)
多串とサドじゃねーか、万事屋が最も嫌いなタッグじゃねーか。
下の神楽なんか早速指の関節鳴らしてるし。
そんな俺らに気づかず、玄関の会話はすすむ。
「この前のハンカチ、一応洗ってはみたんだが……」
歯切れの悪い口調で野郎がポケットから取り出したのは、ズタボロになった……え、あれハンカチだったの?どう見ても雑巾じゃね?みたいな布。
「この男、慣れねェ手洗いするもんで ハンカチが耐えられなかったんでさァ。すいやせんね、名無しさんさん」
「この状況でお前が謝るのがむかつくんだけど」
いいよ沖田君、その調子でいけ。
そう思っていたのはどうやら俺だけのようで、神楽は目をどっしり据わらせて(こえええ!!)玄関へ歩き出した。
オイオイオイオイ、待て!
「なんで税金ドロボーが来てるアル。さっさと帰れヨ、私らまで同罪になっちまうだろ」
「か、神楽ちゃん! すみません、きちんと言って聞かせますから」
「離すネ名無しさんー!」
神楽の力なら、簡単に 肩におかれた手を払ってケンカを売れるだろうに、どうやら手荒な真似はしたくないらしい(俺とは大違いだなオイ! このマザコ……いやファザコン?)