TWO!
□TWO!8
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見回りっていうのは最高に最低な程、暇だ。
総悟が「あっ怪しい奴発見」と言ったきり戻ってこねェのも頷ける(認めねーけど)
ほとんどが何も起こらずに屯所に戻るんだが、いつもいつもそうなわけじゃねェ。
たまにだが、ハプニングが起こる。それを逃さない為に、暑い中 歩き回ってる俺。
………なんか馬鹿馬鹿しくなってきた。
「あーくそマジだりィ。コーヒー買うか」
自動販売機を見つけ、小銭を取り出す。
そして入れようとした途端、背中を強く押され、俺は販売機に顔を叩きつけられた。
「ぶっ!! 誰だてめェェェ!!」
暑さのいらだちも手伝って、ぶち切れた俺は素早く逃げようとした人間を捕まえた。
はじめ攘夷かと思ったが、明らかに違う。民間人だ。しかも女ァ?
「あっすみませんお怪我大丈夫ですか! あとすみません離してください!」
「どれも すみませんですんだら警察いらねーんだよ。業務執行妨害でしょっぴいてやる」
ぐいっと手首を引っ張ると、女は抵抗するかわりに 焦った口調で俺を説得しにかかった。
「わかってます、後できちんとここに戻ってきます! でも今は勘弁してください、じゃないと銀ちゃんがムショっていう所に……!」
「……『銀ちゃん』?」
その単語を聞いて思い出すのは皮肉にも万事屋だった。
いや、でも世の中に銀ちゃんはごまんといるだろう。
銀ちゃんじゃなくてギン・チャンかもしんねーし。
どうでもいい事に思考をめぐらす俺に、女は自分から話し出した。
「銀ちゃんが人をはねちゃったらしくて、今すぐお金振り込まないとムショ行きなんです。息子をそんな目にあわせたくないのはみんな同じでしょう、だから急いで銀行に」
「ちょっと待て」
その手の話なら、随分前に流行った詐欺だ。
つーか、まだやってんのかよ……しかもそれに引っ掛かる奴も。
「そいつァ詐欺だ。安心しろ、その息子は人をはねちゃいねー」
「………え? さ、ぎ…?」
ぽかん、とする女に、いつの間にか怒りがおさまった俺は簡単に説明した。
すると女は慌てたようにメモ用紙を取り出し、電話番号を見せる。
「でもこの電話番号、」
「貸せ」
取り上げて、ケータイから電話する。
思った通り、無機質な声が聞こえてきた。
「架空だ。その病院名なんか、聞いた事もねェ。でたらめだな」
「……そ、そうだったんですか」
ホッとしたように女はため息をつく。
それから、サッと青ざめた。俺を見ている。