TWO!

□TWO!5
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「あのー、すいませーん。銀時クンいますか」


 万事屋の前でピンポンとチャイムを鳴らしているのは、間違いない、ヅラだった。

 なんつータイミングの悪い、…いや、良いのかこれ?

 階段を駆け上がった神楽と新八が「あ、」と声を出す。

 それに振り向いたヅラは、その2人の後ろにいた俺を見て、


「なんだ銀時、出かけ」


 その隣の名無しさんを見て 絶句した。一方、名無しさんはヅラと気づかずに俺を見上げる。


「? 銀ちゃん、お客様がいらっしゃるじゃない。早く行ってあげなくちゃ」

「ばァか、ありゃちげーよ。よく見ろ、あの黒髪。クソ真面目な面(ツラ)を。さっき話してた奴だぜ」

「………え」


 もしかして、と俺を見上げる名無しさんに、頷く。


「…お前、もしかして」

「ヅラちゃん」

「ヅラちゃんじゃない! …って、……お前……!」


 どこかフラフラとした足取りで名無しさんに近付くヅラ。

 それに対し名無しさんはしっかりとした歩みで、ヅラの前に立った。


「……まさか…! …ッぎ」

「この馬鹿者ォォォォオオオ!!!」

「ブゴオォォ!!」


 俺を睨み付けたヅラの頬を、名無しさんが思いきりはり倒した。

 うげっ、まだあの拳は健在かよ……!!(おっかねェ!)

 その勢いはもの凄く、ヅラとはいえ大の男がみっともなく万事屋の床を滑る。

 それを追って、名無しさんは思いきりヅラを怒鳴りつけた。


「言ったでしょう、他の人には迷惑をかけちゃいけないって!」

「……ま、間違いない……!(これは名無しさんだ、)」

「どこが間違えてないって? 爆弾を使って良い事なんかできるはずないでしょう!? いい歳してどうしてそんなヤンチャするの!」

「ち、ちが……!」


 ヅラの胸ぐらをつかんで激しくシャッフルする。

 いい歳してヤンチャするな、とお妙に言われた覚えのある俺はぎくっとしたが、大丈夫、俺は爆弾なんか使ったことねーからぶたれない。



 名無しさんは俺達の母親を自称するだけあって、教育上の怒りは手を出す事に躊躇がねェ。

 その鉄拳は時にあの「先生」にも向かう事があった。

 俺達が、初めて刀というものを握った時だ。



 それは現在も変わってねーらしい。

 ヅラの帯刀を見て、名無しさんの表情が曇る。

 ようやく胸ぐらをつかんだ手を離すと、うつむいた。


「……………」

「……やはりお前、名無しさんだな」

「目上に対してお前……じゃないか。今は、ヅラちゃんの方が目上みたいだものね」


 母親の怒りはすんだのか、俺達はようやく足を動かす事が出来た。


「名無しさんー超かっこよかったアル!」

「ごめんね神楽ちゃん、取り込んじゃって。……ヅラちゃん、あがってく? 話したい事もあるし」

「……ああ」


 いつもであれば俺が即 ヅラを帰すが、この雰囲気でそれは言い出せなかった。

 だいたい、今の名無しさんになったら、誰も手がつけられねェ。

 もう二度とならねーでほしいっつうのは無理だろうな。

 ヅラでこの有様だ、もし高杉なんかと出会ったら………あ、俺そん時逃げよ。

 それか、名無しさんを気絶させて連れてくしかねーな。


「ぎ、銀さん……。普段大人しい人ほど怒ると恐いってマジだったんですね」

「まあなァ。でもアイツが怒るのは母親としてばっかだからなー。私情で怒ったのは見た事ねェや」

「……名無しさんさんて、本当に僕らのお母さんみたいですね」

「でも気ィつけろよ。その時はガキ相手にプロレス技かける母親でもあるから」

「そんなバイオレンスな母親なの?!」



 
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