TWO!

□TWO!4
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 夏真っ盛りの暑い日、俺達はテーブルを囲んでため息をついた。

 扇風機をつけたい。ものっすごく つけたい。

 でもそれをしたら、本気で死ぬ。


「……どうすんですか、これから」


 新八が何度目かの問いを口にするが、答えは見つからなかった。

 こっちが聞きてーよ。


「あー、なんでこんなことなってんだァ」

「お前のせいだろーがァァァア!!!」


 どうやら禁句らしい台詞をはいたせいで、俺は新八に怒鳴られ神楽に頬をぶん殴られた(こいつら暑さのせいで余計に怒ってねーか?!)

 そんな中、名無しさんはテーブルに置かれた物を手に取り、頬に手を添え、ため息をついた。


「…まさか、もうお金がないなんて」





 最近 依頼が少ないせいで、金が充分に入らねー日が続く。

 その上、俺がパチンコ行ったり糖分を得たりするせいで、その金がどんどんなくなって、冗談抜きで危ない……と新八に言われた。

 ちなみに新八は昨日、そのことをに姉貴に話したら長刀で追いかけられたらしい。

 バッカだなー、んなこと正直に話してんじゃないよ。俺だったら永遠に黙ってるね、死ぬくらいなら嘘つくね。


「姉上だけの給料じゃ、やっていけないし…。どうにかして給料欲しいんですけど、銀さん」

「バカヤロー、苦しんでんのはお前だけじゃねーっつの。俺が給料欲しいよ。だいたいおかしくね? 従業員が給料もらって社長の俺が給料渡すっておかしくね?」

「おかしいのはアンタの頭だ」


 ぐうう〜。

 しょうもない口喧嘩が止んだのは、神楽の腹の音のせいだ。

 そういや、朝からこの話で何も口にしてねえ。腹減ったなァ・・・。


「名無しさん、お腹空いたアル」

「そうだねえ、とりあえず 冷蔵庫にあるので作るね」


 立ち上がった名無しさんは台所の冷蔵庫を開けて、「あっ」と声をあげた。

 それに「どうした」と駆けつければ、中身が空っぽの冷蔵庫。


「おかしいねェ、昨日野菜買っておいたのに……」

「…おい神楽、何 目ェそらしてんだ。わかるんだよ、お前無駄に素直なんだよ」

「な、何がアル? 私ちょっと目に埃入ってそれをとろうとしただけヨ」

「神楽ちゃん、目にニンジンのかけらが入ってるよ」

「マジでかァァァァ! 丸飲みしたはずなのに………あ」

「あ、じゃねェェェェエエよ!! だいたい年頃の娘がニンジン丸飲みってどういうことじゃァァァ!」

「銀ちゃん、落ち着いてっ」


 暑さのせいで余計にイライラする俺達を見事に仕切るのは、やはり名無しさんだった。

 懐から古びた巾着袋を取り出すと、それを軽く振る。

 間違いなく小銭の音がした。


「まさかそれ、へそく」

「んなわけあるかァ! 名無しさんさんが毎日お登勢さんの手伝いをするから、もらってたんですよ! 掛け軸の裏に100円隠してるアンタと一緒にしないでください」

「ああってめッ何バラしてんだ!」

「たった100円でへそくりした気分なんて、どんだけ小さい男アルカ。そんな金、取る気しないネ」

「だったら掛け軸から目を離せ」

「ふふふ。それじゃ、行ってくるね」


 名無しさんが靴をはき出ようとするのを見て、俺はすぐに続いた。

 昔の過ちは二度としねー。消えないように見張ってやる。


「ぷぷーっ、銀ちゃんどんだけ名無しさん好きなんだヨ。恥ずかしいアル、ああいうのをマザコンていうのヨ新八」

「ファザコンに言われる筋合いはねェ。どうせ暑いの嫌なんだろ、だったら留守番しとけ」


 ところが、神楽と新八も続いて靴をはき出した。


「家にいても暇だから、ついていきますよ。それにリクエストあるし」

「私もアルー! 今度こそ名無しさんと買い物できるネ」


 俺をわざわざ突き飛ばして名無しさんの腕にからみつく神楽(チクショー!)

 そんな光景を見て名無しさんは一言、「ありがとう」と笑った。



 
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