TWO!
□TWO!3
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久々に金が入ったので、俺は名無しさんを連れ店に入った。
神楽や新八は別の依頼に行かせているから、邪魔はいねェ。
気のせいかなんとなくそわそわしている名無しさんに、おそらく初めて食べるであろう、俺の大好物を見せる。
「・・・銀ちゃん、何、それ」
「パフェっつーんだ。すんごい甘くてうめェんだぜ〜、いくつ食っても飽きねーくらい」
「すごいドロドロしてそうだけど」
「ああ気にすんな、そういう食品なんだよ」
「へえ」
名無しさんは頼んだ焼き肉定食をご機嫌にほおばりつつ(そりゃな、元の時代じゃあ焼き肉なんてめったに食えたもんじゃねーし)、俺のパフェをちらちらと見ていた。
「食うか?」
「ううん、いらないよ。それ、甘いんでしょう? 私太りたくないから」
「別にお前、その体型で太る太らねー関係ねェだろ。全国のハム子がぶち切れるぜ」
「はむこ?」
「んなことより、ほれ、食ってみろ。絶対ハマるから、毎日食べたくなるから」
「いいよ、私は甘い物よりお肉がいいよ」
「それ結局一緒じゃねーか、甘い物も肉も両方太るんだよ」
スプーンにパフェを一口分乗せ、名無しさんに突き出す。
困ったように眉をひそめた名無しさんは、やがて諦めたようにスプーンに手を伸ばした。
が、俺はその手を軽く避けた。
「あーんしなさい、名無しさんチャン」
「どうして公共の場でそんなことしなくちゃいけないの。子供じゃないんだから」
「わかってねーなァ名無しさん、今は大人同士であーんする時代なんだぜ」
「えええ!」
親が子供にする「あーん」だと思いきり思っている名無しさんは、勢いよくまわりを見渡した。
そして一組の大人カップルを見て、指さす(おいおい、指さすなって)
「あれも、あーんするの?」
「おう、するする」
「・・・いったい、親の躾はどうなってるのよ・・・!」
「いや、そういう意味のあーんじゃなくてだな・・・まあいいや」
頭を抱える一昔前の「オカン」は、やっぱりまだこの時代に慣れてないことが重々理解できた。
まあ強制するわけにもいかねーし、とスプーンに乗っかったままのパフェを口に運ぶ。
「・・・ハア」
なんでかしらねーが、名無しさんがあーんするのを断っただけで、気分が胸糞悪い。
やっぱり俺ァ、まだ引きずってんだろうか。
こいつは、俺のこと子供だとしか思ってねーのによ。
「・・・銀ちゃん、ごめんね?」
「あ? 何が?」
「だって私、銀ちゃんに頼ってばっかなのに、まったくこの世界になじめてなくて・・・ううん、なじめたくないの」
「・・・・・・」
「私、まだ、昔がすごく大切で」
「わーってるよ、アンタが古い脳みそつめてんのは。別に無理になじまなくていい」
ただ、
「前みたいに、急に消えたり、すんなよ」
「・・・・・・うん」
相変わらず、優しいね。
名無しさんは恥ずかしそうに呟いて、ふわりと笑った。
「・・・・・・(チックショー)」
そんな顔されちまったら、何も言えねーじゃねェか。