TWO!
□TWO!1
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ガキん時の夢を見るのは、随分と久しい。
『銀ちゃん、ご飯できたよー』
『ヅラちゃん、櫛作ったよー』
『晋ちゃん、一緒に仲直りにいこう、ね』
そう言って次々にお願いを叶えてくれたあの女は、みんなから好かれていた。
裁縫はまるで駄目だったけど。
20前後か、歳はわからねェ。
あいつらが「先生」と呼ぶ男の妹で、そいつと一緒に俺らを遠くから見守っていてくれた。
『いってきまーす』
『名無しさん、どこいくんだよ』
『ん、お買い物だよ。今日はお魚だからねえ』
高杉の問いに にこやかに手を振り、少ない小銭を持って、あの女は出ていった。
それきり、あの女は、戻ってこなかった。
年月は経ち、「先生」は奪われ、俺達は武器をとった。
しかしそれでも、刀を習う時間はなぜか渋い表情をするあの女は、戻ってこなかった。
そして俺は、そういや、一度もあの女を名前で呼んでねェと、夢の中で気が付いた。