TWO!
□TWO!18
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晋助がその天人と出会ったのは、屋形船だった。晋助に、あの天人達が取引をもちかけてきたのだ。
俺達を、春雨の仲間にしてくれ。
天人達はよほど春雨の族というブランドが欲しかったのか、自分の族がここにいる三人だけで、希少価値のある族ということや、色々な武器を発明したことや、無敵の春雨に自分達の発明が加われば完全無敵だと必死にアピールをした。
そして、偶然とも思える言葉に、今まで無反応だった晋助が顔をあげた。
「一番の発明といってもいいのが、人を時空に飛ばす機械(からくり)だ! 俺ァこいつで昔にいき、女を一人飛ばしたんだぜ」
天人は、晋助が反応したのが発明への興味かと勘違いをし、さらに詳細を話した。
その年代、場所、そして女の特徴が、すべて晋助の覚えているそれらと同じだった。さらに天人自身が言ったのだ、「本来は吉田松陽を飛ばそうとしたが、間違えて名字が同じだけの女を飛ばしてしまった」と。それだけでもう確実だ。
長年謎だった、名無しさんの消えた理由がわかった。
晋助は知らないふりをして、ご機嫌の天人に尋ねた。
「その女はどの時代に吹っ飛ばされたんだ?」
「さあな……だが、女からすりゃとんでもねー地獄だろうな。いきなり見知らぬ土地に吹っ飛ばされ、それどころかすっかり変わっちまったこの国に驚愕し、絶望していることだろうよ」
楽しげに笑う天人に、晋助もにやりと笑った。
「そうかィ。………ところで春雨の件だが、条件をのみゃかけあってやるよ」
「条件?」
「あァ。その女、見つけてこいや」
絶句する天人に、晋助は「難しいか?」と嘲笑う。だが、目の前の天人に拒否権があるはずがないことはわかっていた。春雨に入るためならなんでもするだろう。
しばらくして、天人の首肯に、晋助は満足げに笑んだ。