モラハラ2
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「ゆき〜が〜とけてかわ〜に〜なってながれてゆきます〜」
実際川なんて見あたらないけど。
「つく〜し〜のこがはず〜かしげにかおをだします〜」
そしてそのウブなつくしは、先ほど鬼の小十郎さんが全てかっさらっていった。
「もうすぐはあ〜るですねえ」
さあさあ政宗さん、
「ちょっときどってみませんか?!」
「嬢ちゃん今は夏だよ」
「シャアアァァァラッップ!!!」
だああああもう、猿飛さんの当たり前すぎるツッコミが腹が立つ…!
いくらお客様とはいえ、夫婦仲を冷やかすことは、おてんとさまが許してもこの愛の戦士名無しさんが許しませんッ!!
「ていうか真田さん、もう帰ってるんでしょ? 猿飛さんなんでまだいるんですか」
「いや、帰ってないからね旦那。勝手に帰さないで、可哀相すぎるから(色々な意味で)」
わたしが奥州から現代に戻り、そして再び奥州へトリップできたあの日から早何ヶ月。
気づけば雪がとけ、桜も散り、今は太陽が厳しく照りつける毎日。
ただ、政宗さんの態度だけは今も昔も変わってない。
「政宗さん、いい加減 甲斐組のみんな帰してください。じゃないと、これからもっと楽しいことができませんよっウフ☆」
「おいアンタら泊まっていかねェか」
「政宗さんどういう意味ですかそれ」
即座に甲斐組の宿泊を提案する政宗さんは、まさにツンそのもの。うわーん、あの大晦日のデレ政宗さんは今いずこおおおお!!?
「ちょっと、猿飛さんどう思います? これでもこの人奥州の王なんですよ」
「うーんいーんじゃなーい?」
他人様ののろけほどつまんねーもんはないしーと、今にも鼻の穴に指を突っ込みそうなほどやる気のない猿飛さん(流石にそれはないだろうけど) なんだ、いったい何があったんだこの人に。言っておくがわたしは関係ない、と思う。だって猿飛さんや真田さんと再会したのは数分前だから。それも、あの冬以来だ。
「…………どうしたんですか? 猿飛さん」
「…いや、別にないけど」
「嘘だー、絶対にあるでしょー」
きっと自分の恋愛が存外上手くいかないから八つ当たりしてるんだ。クフフのフー、しょうがないなあ、たまに猿飛さんにお世話になってるし相談にのってあげましょう!
そしてあぐらをかく猿飛さんの肩に手をのせ、「まっかせ〜なさい」と声をかけてあげた。
「餅は餅屋、女の子の気持ちは女の子がよくわかるもんですよ。さーさっ、この恋愛マスターねえさんに言ってみなさい」
「誰がsisterだ」
「ぶひっ!!」
ちょうど背を向けていたため、後頭部を政宗さんにげしっと蹴られる。いってえええ、まさかここでツッコミが入るとは…ッ!!
「ダメですねえ政宗さん、奥州のキングたるもの民にだけじゃなく全世界の人間に優しく、そして協力してあげなくちゃ!」
「生まれて十数年のガキに色恋教えてもらいてェ男なんて そうはいねーと思うがな」
「何言ってるんですか、恋愛は年齢より経験ですよ! 猿飛さんはきっと今まで花より団子だったんでしょうけど、ねっ猿飛さん」
「そこで同意求めないでくれるかな嬢ちゃん。なんか悲しくなってくるから。ていうか団子なのは俺様じゃなくて旦那だよ」
「(……自分のことは否定しないんだ)」
まあしょうがないけどねー、わたしと政宗さんみたいなラブリーカップルにはこういう恋の相談とか無用だし。なぜなら相談することなし、ちゃんと真正面からぶつかって乗り越えていけるから☆
「まあ猿飛さんも頑張ればわたし達みたいに、誰もが羨むベストカップルになれますよ! ねーダーリン」
「名無しさん、悪ィが猿と話すことがある」
愛する夫の腕に抱きついたものの、そりゃもうキレーにするりんと抜けられ話を変えられてしまった。猿飛さんがなぐさめようと片手をあげてくれたけど、ううん、いいの、わたし大丈夫だから。政宗さんのシャイ加減もS加減もツンツンツンツンツンデレ加減も理解してるから。
それに今は珍しく小十郎さんが外に出てるから、何やってもきつ〜いお仕置きを受けなくてすむしね☆
チェッしょうがないなあ……でも、予約だけは忘れない!
「はいはーい政宗さん、猿飛さんと話が終わったらわたしの相手してください!」
「OK. 但しアンタがこれから大人しく草むしりして夕餉準備の後布団敷いて眠ったらな」
「はーい」
「あれっ今の流していいの嬢ちゃん? 流してよかったの?」