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□月に想う
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四国の夜空をともに見上げる。
直江は高耶を抱きしめながら。
高耶は直江に背を預けながら。

「…………」

「…………」

高耶の視線を捕らえて離さないのは月だ。

「あなたの悪い癖ですね。月ばかり見て……」

景虎もそうだった。
月に目を奪われるといつまでも飽かず眺めていた。
魅入る高耶に直江は言う。

「月じゃなくて俺を見て」

俺を、見て――高耶さん……。
直江のその切なげな囁きに。

「――――見てる……」

「え?」

高耶のくちびるは、

「オレが見てるのはいつもおまえだ、直江」

と、そう紡いだ。



「どういう、意味ですか?」

「………」

高耶は答えない。
答えたくなかった。

月の光はおまえの視線のようだと――
おまえの腕のようだと――

あの月はまるで直江のようで、
直江を強く欲する自分があの月になにを想い、いつしかなにをしているか……。

知られたくはなかった。
けれどこの男を欲する欲望は押さえきれない、だから。

「――直江」

「――はい」

「オレを地上(ここ)へ繋ぎ止めろ。
 生きていることを、感じさせろ……」

「高耶さん……」

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