other…

□視/線
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鏡のなかの高耶に、直江は冷笑を向ける。

「あなたも、私にされたがってる……」

「違う」

「違くない」

「オレは女じゃない」

「…………ええ」

羞恥か怒りか。
涙のにじむ目でにらみつける高耶に、直江はスーっと目を細めた。

「知ってます。そんなこと」

「直江」

「しかしそんなことは問題じゃない。
 相手が男でも、同じコトができるんですよ、高耶さん」

「直江……」

鏡越しの視線が痛い。
高耶は、自分も痛みを受けたかのように苦しそうに、言葉を搾りだした。

「……そんなに、抱きたかったのか…………?」












「――――――はい……」



誰を―――とは、問わず。答えず……

高耶は静かなまなざしで、鏡のなかの男を見つめる。
湖のような、静かな、澄んだまなざしで。
いったい何を探り出そうというのか……。

お願いだから、そんなにまっすぐな瞳で見ないでほしい。
あなたが思い込みたいような都合のいい答えなんて、ないのだから。


切なくて、

哀しくて、

愛おしくて。


直江は、目の前のひとをさらに強く抱きしめた。
そうして首筋にくちづけるように顔をうずめ、

「私は、あなたを欲する、オトコです……」

押し殺した声でそう告げると、可哀相な囚われ人を解放し、身をひるがえした。
一度も、じかに視線を合わせはしないまま。



高耶は、しばらく出てこなかった。

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