other…

□鬼……!!
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「うわ、おい、ねーさん、大丈夫かよ」

「コイツ、酔ってからが長ぇのは変わんねーな」

グニャリフニャリと道路に崩れ落ちそうな綾子を、高耶と千秋が両側から支える。
そんなふたりに直江は、

「高耶さん。長秀。喧嘩両成敗ということで、ふたりに等しくお仕置きです」

「えっ」

「な、なんだよ直江」

怯える彼らに、直江はニッコリと微笑みのたまった。

「晴家をホテルまで送り届けてやって下さい」

……………。

「「なに〜〜っ!!」」

「おや、仲良くハモって」

けっこうなことですね。よしよしと直江は頷いた。

「晴家んとこのホテル、ったら逆方向じゃねーか。
 おまえ車持ってきたんだろ、おまえが送ってけよ!」

「そーだそーだ」

「それではお仕置きにならないでしょう。だいたい私は明日……というかもう今日ですね、
 実家の用事が朝早いんです。これ以上晴家に付き合っていたら」

帰れなくなりますよ、と直江は渋い顔で声をひそめた。

「「〜〜〜!!」」

高耶と千秋は顔を見合わせた。
お互いの目が「どーすんだよ」と言っている。
いくら綾子が強かろうとやはり女性だ。放ってはおけない。
かと言ってホテルまで送り届けられる気力と体力も、ない。
う〜〜ん。
唸ったのち、よしっ、と高耶が気合いを入れた。

「おまえんち運ぶぞ、千秋」

「はあ〜〜!?」

千秋は目を剥いた。

「なんでだよっ」

「だってホテルよりおまえのアパートの方が近いじゃん」

しかし当のお届け物はというと、

「あらぁ、あたし景虎んちでもいいわよぉ?」

「げっ、ねーさん、それは勘弁」

今度は高耶が引いた。
ぎゃーすかぎゃーすか騒ぐ面々に、直江は念を押す。

「くれぐれも人様の迷惑にならないように。次の調査の予定は改めて連絡します。
 ――高耶さんも、気をつけて」

最後だけ語気を和らげそう言うと、
直江は「じゃ、そういうことで」とセフィーロに乗り込んだ。

「なおえ〜〜! またね〜〜!!」

ぶんぶんと大きく手を振り、上機嫌な綾子はこれまた上機嫌に言い放った。

「さあ、まだまだ呑むわよ〜〜。ほら、長秀。景虎ぁ。綾子さんを案内しなさーーい!」



おいおいおい――…
マジかよ……。
残された高耶と千秋は、非情に去り行くセフィーロに向かって絶叫した。


「「直江の、鬼ーーっ!」」



そう、本当の鬼は、直江かもしれない……。


END


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