other…

□鬼……!!
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「っざけんなよ、この馬鹿虎!」

 ヒュンッ

「ふざけてんのはソッチだろーが! インチキ野郎!!」

 ぴしっ

「あ? てめーなんかよりゃリッパな生徒じゃねーか
 学年トップの俺様の方がよっ!」

 シュッ

「はっ! ほざくな座敷わらし!
 てめーのせいでエライ目にあってんだ、よっ!!」

 ぺしっ




――殴り合いではない。
豆だ。
高耶と千秋が豆を投げ合っている。

「きゃ〜〜! 景虎ぁ、そーんな男やっつけちゃいなさい!
 そーれ、鬼は〜外ぉ!」

キャハハハと無邪気にけしかける綾子をひとまずなだめ、
直江は対決するふたりを一喝した。

「長秀! 高耶さんも、いい加減になさい! いったいなにをしているんですっ」

その貫禄に、ふたりの動きがぴた、と止まった。
サングラスこそかけてはいなかったが、黒のダブルスーツで仁王立ち、
な直江はさらによーく見ると、額に怒筋まで浮かべている。

どっかの組の若頭か、つーの。
少々怯んだが、千秋は不服を申し立てた。

「直江、先に仕掛けてきたのはコイツだぜ、コ・イ・ツっ」

「コイツ呼ばわりするな、長秀。――そうなんですか? 高耶さん」

「うっ、だって直江、」

かくかくしかじかで――。
切々と訴える高耶が言うにはこうだ。

一、千秋がオレをバカだのドン臭いだの言い出した。
二、コイツのせいでクラスメイトにも記憶喪失の疑いをかけられた。
三、コイツの《力》開発の特訓はただのイジメだ。まるで鬼だ。

「で鬼退治には豆だよな、てシャレで投げつけたらコイツ投げ返しやがったんだよっ」

「ったりめーだろ! やられたらやり返す!」

「この、鬼! 悪魔!!」

「うるせー、ダメ虎!」

「んだと〜??」

「はいはいはーい! あたしも景虎に加勢するわよ〜!
 ほらほら直江も入りなさいよぉ」

やるかコラ!
おう、上等だっ
きゃあ、やれやれ〜!

「――。高耶さん…長秀……」

地を這うような声を発し。
直江は今度はつかみ合いになりそうなふたりの首根っこをガシっとつかんだ。

「「ぐえ」」

「まったく…。なんですかふたりして! 小さな子供じゃないんですから!」

「けど直江、」

と言い募ろうとする高耶に諭すような眼差しを向け、直江はひとこと。

「高耶さん。長秀のおもちゃにされているのは同情しますが、
 あなたも悔しかったら早く《力》を取り戻して下さい」

「え〜〜っ」

そーだそーだ景虎、おまえがバカなのが悪い、
とニヤニヤする千秋には睨みをきかせひとこと、

「長秀。おまえもどうせなら《力》を持った景虎様に挑んだらどうだ。
 景虎様と互角の《力》を持つと言われた男の名が泣くぞ」

「うっ」

返す言葉もなく立ち尽くす夜叉衆No.1(なハズ)とNo.2(なハズ)。
いまは殊勝な様子のふたりだが、これはまたすぐにやり合うだろう。
なにか再発防止策はないものか……。
思案していると、

「直江、かーっこい〜〜! はいっ、説教坊主にカンパーイ!!」

あははは、楽しいわね〜〜…とまだ飲み続けようとする綾子を見て閃いた。

「まずは、外に出ましょうか。ほら晴家、立てるか?」



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