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□もの言わぬ月の誘惑(現代編)
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(言われなくとも、あなただけをいつも見ている)
いつの時代も自分にはあなただけだ――!
甘やかな命令に呼び起こされる、おのれの内の何か。
「高耶さん」
『んー……?』
眠そうな高耶に囁くように。
「高耶さん…」
『――…』
「タカヤサン……」
押さえようにもどうにもならない想いが息を吹き返す。
叫びだしたい衝動を抑えこみ、直江は月を見つめる視線に力を込めた。
「――愛しています…」
□
(なおえ…?)
耳元に注ぎ込まれた、秘めやかな蜜の声(ハニー・ヴォイス)。
絡めとられ侵される。
高耶は目を閉じ、寝返りをうって月に背を向けた。
それでも月は、自分を追ってくるだろう。包んでくれるだろう。
(あいしている…? ――オレを…?)
夢うつつを彷徨(さまよ)いながら。
高耶は、満足げな笑みをくちもとに浮かべ、呟いた。
「そんなこと、しってる――…」
満月に誘われた、
ふたりの夜が過ぎてゆく。
END
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