ANNIVERSARY

□2006/04 千秋Birthday
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「千秋、明日おまえんち行くから、ちゃんと部屋いろよ」

いいか、絶対だぞ! ――とバカ虎に念をおされたからじゃあねぇが、
べつに用事もなかったから部屋にいたさ。

松本に借りたアパートの一室。

今日は土曜日だ。
休みの日に、しかもシゴトもこれといってない時に、なんの用だよアイツ。

はっはー。さてはエイプリルフールだな?(しかも全然おもしろくねー)
バカバカしい。


――ところがだ。


 ピンポーン……


ま、まさかっ


 ピンポンピンポン
   ピンポーン――…


おいおいおい、嘘だろ!?


「うるせーぞ!」


思いきり玄関のドアを開け放つと、

「よ、千秋!
 誕生日、祝いに来てやったぜ!!」

そこには、本当に景虎がいた。
しかも、おまえもか直江……つーか、おまえだな、吹き込んだの……。





勝手に上がり込み、勝手にキッチンをガサ入れする景虎。

「え、おまえんち、皿もねーの?
 つーかなんもねえな。コップはあんのか?」

そんな景虎を眺めつつ、直江に小声で詰め寄った。

「おい、なんなんだよ」

「高耶さんが言っただろう、祝いに来た、と」

「あのなあ…」

呆れた。

「誕生日ったって、」

しかし直江は、景虎を見つめる目元を和らげ言う。

「いいじゃないか。たまには、こういうのも」

「………」

誕生日、なんて
俺らにはあってないようなもんだと、俺は常々思っている。
宿体の誕生日を祝ったり、ましてや詫びたりなんてことはしない。

だけどこいつらは、
そういえばどの姿のときも、その宿体の「誕生日」を大事にしてたな。
そんなことを思いだした。





「千秋。ケーキ、どれがいいんだよ」

箱を開け広げ、景虎がオレを呼ぶ。

「早く選ばねぇとオレ食うぞ」

なんて、おーお。
ずいぶんはしゃいでんなぁ、大将。

「いや、いいんじゃないんですか、高耶さん。好きなの食べちゃっても」

て直江。
おまえもなんか、幸せそうだなあ、おい。

あーあ。
別にケーキなんか食いたかねーけど、

「おう、待て景虎。主役の俺様差し置いてなに食ってやがんだっ」

おまえらが楽しそうだから、しゃーねー、付き合ってやるよ。

千秋修平として、な。





「おら景虎。そのデカイ苺よこせ」

「あ? やだ。コレはだめだ」

「だって俺のだろーが!」

「そーだけど! コレはオレの分なんだよッ!」

「はあ!? なんだそりゃ!」

んながっしりガードすんなよ。ったく。
いままで見てきた景虎んなかでおまえが一番ガキだぞ。

直江もっ。なんだよ、そのツラ……
すっげえ甘やかしなオーラ全開。


――むかつく。


嬉しい、と思ってしまった。
うわ、認めたくねぇ。

けど。
だって。

そーゆーおまえら見てられるだけで、――奇跡だ。


あ〜〜っ!!!!


マジむかつく。
ほんっと情けねぇくらい、嬉しんじゃねーの、俺。





意地でもくちに出したくはないから、心んなかで言ってやる。

(サンキュー)





END


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