ANNIVERSARY
□2005/02 バレンタインデー(前編)
1ページ/2ページ
武藤潮は気づいてしまった。いや真相はわからない、こわくて聞けないしかし。
昨日の今日でソレって……!?
(仰木? 橘? おまえらって……)
※
さかのぼること数日前、潮は赤鯨衆アジトの食堂で嘆いていた。
「もうすぐバレンタインだってのにな〜。
いつもならバイト先の女の子や近所のおばちゃんたちにモテモテで楽しい一日だったのに、
ここじゃおばちゃんどころか野郎しかいねぇ。ああ、やだやだ」
すると「〈ばれんたいん〉てなんじゃ?」とたむろっていた隊士たちが興味を示したので、
好きな人にチョコレートをあげて仲良くなる行事のことだと教えてやった。
そしたらバレンタイン当日の昨日、食堂はすさまじいことになっていた。
集まっていたのは卯太郎をはじめ、おもに遊撃隊の自称「仰木高耶親衛隊」の面々。
通常ならうまそうな食事の、そして酒のにおいに満ちている食堂が、
摩訶不思議な創作菓子の数々でいっぱいになっていた。
このにおいに誘われたのかはしらないが、
「あ、仰木さん!」
入口に現れた高耶に気がついて、卯太郎がパタパタとかけより箱をさしだす。
白い箱に鎮座するは、手づくりのチョコレートケーキ。
「あの、ぼく一生懸命つくったがです! よかったら食べて下さい!」
ぺこり一礼しながら卯太郎は必死だ。
え? と不思議そうな顔をする高耶に、
「今日は〈ばれんたいん〉ですよね。ぼく、仰木さんのことが大好きですき! だからコレっ」
「卯太郎……」
うめいて、高耶は額に手をあてた。
「あのな、卯太郎。バレンタインてのはふつー、女が、好きな男に、贈る日なんだぞ」
諭すように言い、立てた人さし指を卯太郎の目の前に突きだした高耶だが。
顔を真っ赤にし、う〜っ、と目ヂカラで訴えかける少年の姿には弱かったらしい。
微笑して、さしだされている箱を自分の腕に抱えた。
「サンキュー、卯太郎」
とたん、卯太郎の顔がぱあっと輝いた。
「あ、あ、ありがとうございます仰木さん!」
文