蜜/室

□Holy Sodom's Night
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「高耶さん……」

「ッ……」

密室におとずれる、闇と吐息。
濃密な、夜の気配――






「高耶さん――…」

後ろから抱きしめたまま、あおのいたくちびるに、耳元に、首筋に。
何度もくちづけをくりかえし、何度も名をよぶ。

「タカヤサン」

「な…おえ……」

ぴく、と身を震わせた高耶がもらす息も、熱を帯びていた。

「おまえ……懐かしい匂いが、する…」

ふたりきりになったときから、チョコレートとワインとは違う香りを感じていた。

「…わかりますか?」

「ああ…」

それは、出会ったころからいつも、そばにいるとかすかに感じたあの香水の香り。
直江の、匂い――。

「なつかしいな……」

何年ぶりだろう。
つぶやいて、高耶はその香りを深く吸い込んだ。
直江は高耶の腰にまわしていた腕に力をこめ、さらに引き寄せた。
互いのカラダの熱さを感じる。
高耶の耳朶(じだ)を軽くはみ、直江は囁いた。

「あなたを抱くためにここへ来ました」

しかし潤む瞳で返された答えは「ダメだ」

「なぜですか?」

「………聞こえる……」

直江は目を細めクッと笑った。

「それはあなたが激しく声をあげそうだから…?」

「なッ…」

「そんなの………聞かせてやればいい」

言って直江は素早く高耶を抱き上げた。
高耶はもがくがそのままベッドへ放りだされ、すかさず押さえ込まれた。
いつの間に外されていたのか、シャツは全開で胸がはだけている。

「ああ、もう……」

高耶は呆れたように直江を見上げ、男のシャツの襟を引っ張った。

「おまえも、全部脱げよ」

なにも隠すな。
その胸の銃痕も。






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