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□月ダケガ…
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ここは――
時間の流れからもルールからも隔絶された世界。
何者にも侵すことのできない領域。
天高く室内を照らす月だけが――しっている……
†
飼い馴らされたカラダは、
シュッ――…
男のネクタイをほどく気配にさえも反応する。
ゾクリ、と背筋を走る予感。
ドクリ、と心臓を打つ期待。
男はからかうようにささやいた。
「眼が、発情してますよ」
そうして熱を孕んだ虎の瞳を間近に見つめる。
「綺麗だ……」
己の意志で囚われてでもいるのか。
虎は身を這う手から逃れようとはしない――。
熟れた眼差しと飢(かつ)えた声で訴える。
「ノドが……渇いた……」
「私を、挑発してますね」
男はさも愉しそうに喉の奥でわらった。
「私が潤してあげますよ」
その渇いた喉もカラダもすべて。
「俺の水で、満たしてあげる」
男の舌が虎のくちびるをなぞり湿らす。
挿し入れられて絡みあう。
「…ん……、ハッ……ア、んんッ―――」
ゴクリ、と混ざりあった唾液を飲み下した。
ディープすぎるくちづけ。
眩暈がする――
「喉の渇きは癒えたでしょう?」
低く甘く、男は問う。
酸素を求め喘ぐ虎は、こたえることもできないようだ。
目尻に滲む涙をくちびるですくいとりそのまま耳元へ――
「つぎはあなたのカラダを満たしましょう」
ビクン、と虎は身を震わせた。
無声のままくちびるが男の名をかたどる。
「ナオエ……」
おまえがオレを狂わせる。
コンナノハオレジャナイ……!
「おや。……コレがあなたでしょう?」
ささやかな意地悪。いつも誘うのはあなただと。
「だから、もっとうんと乱れるあなたを見せて」
一緒にイキましょう? さあ、
「脚を開いて、俺を……受け入れて……」
真空になるほど深く深く、あなたの内(ナカ)へ――
†
重なるふたつの肉体は、やがてひとつのカタマリに。
蜜色の満月の下、
獣たちが戯れる――
END
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