KOF夢2
□おかえり、おやすみ、また来週
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静かな部屋の中に、電話のコール音が響いた。
びくりと肩が震え、夢の中から引き戻される。
今何時だと思ってんの?
深夜12時を回ったんですけど。
安眠妨害も良いところだ。
放っておいたら留守電に切り替わって、掛けてきた相手の不機嫌そうな声と、時折車が走る音が聞こえる。
『今から行く。』
それだけ言うと、電話はぷつりと切られた。
「どうぞご勝手に。」
どうせ合い鍵を持っているのだから、わざわざ開けてやらなくても自分で開けて入ってくるだろう。
だから私は着替えは疎か、布団から出さえもしない。
それから5分とせず、カチャリと鍵が回され、一応時間を考えてなのだろうか、静かに扉が開けられる音。そして、やはり静かに部屋に入ってくる気配と、冷たい外気。
廊下に響く徐々に近付いてきた足音は寝室の前で止まり。
女性が寝ているというのに、お構いなしとばかりに扉を開けて盛大な溜め息一つ。
溜め息吐きたいのはこっちの方だ。
『連絡してやったんだ。飯くらい用意していろ。』
「何でよ。庵が勝手に来たんでしょー?ご飯なら自分家帰って食べたら良いんじゃない?」
『ライブハウスからなら、お前の部屋の方が近いからな。』
「コンビニがあるだろうがコンビニが。」
『いや、無い。』
あるだろ。
コンビニ弁当すら買えない程、金欠なんだろか。まさか。
シャイな八神君は、店員さんに『お弁当温めますか?』『箸はお使いですか?』と当たり前に聞かれる事さえ、受け答えに困るんでしょうね。
『貴様、今物凄く下らん事を考えただろう。』
「滅相もございません。……お腹空いてるなら自分で作って食べて。食器はそのまんまで良いから。電気は消していってね。」
あ、あと出ていく時は、ちゃんと鍵締めてね。
おやすみ。
ぶつぶつ不満そうに呟きつつも台所に向かう彼の背中を眺め、ふあっと欠伸をしてから目を閉じる。
食べたらすぐに帰るし、いつもの事だが、ただ夕飯を食べる為だけにウチに寄ってるんだろうな。
それも全然、構わないし、むしろその為に食材は余計に買い溜めてたりするのは、内緒だけれど。
もし叶う事なら、『今から行く』でなく『ただいま』と言って来てくれたら良いのに。なんてね。
さぁ、今日はお帰り。
また来週。
『じゃあな。』
「おやすみ。」
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